消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

地サイダーのガラスびん容器に共通リターナブルびんを取り入れるなど、清涼飲料業界では環境負荷低減を追求した取り組みを進めています。今号では、清涼飲料業界のリユースへの取り組みについて、語っていただきました。

[鼎談] 幸 智道 公文正人 早見 優
清涼飲料容器のリユースの取り組み

幸 智道/ガラスびんリサイクル促進協議会事務局長
公文正人(社)全国清涼飲料工業会専務理事
早見 優/聞き手

幸 智道
(ゆき ともみち)
ガラスびんリサイクル促進協議会 事務局長
1953年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1976年キリンビール株式会社入社。営業部、CSR推進部などを経て、2010年3月同協議会事務局長に就任。
公文正人
(くもん まさと)
(社)全国清涼飲料工業会専務理事
1951年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1975年サントリー(株)入社。環境部部長などを歴任して、2006年9月から(社)全国清涼飲料工業会に出向、環境部長、2008年5月より専務理事。
早見 優
(はやみ ゆう)
日本生まれ、3歳から7歳までグアム、7歳から14歳までハワイで育つ。90年上智大学比較文化学部日本文化学科卒業。82年にデビュー以来、歌手・俳優・DJ等幅広い分野で活躍。92年にはブラジルで行われた地球サミットにNGO団体、地球女性連絡会代表として参加。現在もイベント・トークショー多数参加。

1.リユースのメインはガラスびん

リユースはガラスびんだけ
早見
今回のテーマは、「3R」の2番目の「リユース」です。このリユースという言葉もかなり普及してきましたが、「リターナブル」のことですね。それでは、リユースの現状から伺います。
公文
今の清涼飲料容器の中でリユースしているものは、現実的にはガラスびんだけです。
ガラスびん以外にわれわれの使っている容器には、紙容器や缶、PETボトルがありますが、耐久性や安全性などさまざまな面から考慮すると、ガラスびん以外はリユースできず、リサイクルによる再資源化が適しているといえます。
ガラスびんの歴史
早見
ガラスびんは、リユースに適しているのですね。では、その理由について伺う前に、ひとまず、ガラスびんのリユースの歴史について教えていただけますか。
ガラスびんができたのは紀元前3000年頃といわれており、容器としての歴史は大変長いですね。清涼飲料に関しても、日本で一番古くから使われているのがガラスびんといわれています。
1853年にペリー提督が浦賀に来航したときに、幕府の役人を接待する際に提供した「レモネード」が、日本の清涼飲料の幕開けといわれています。当時のガラスびんは大変貴重なもので、ペリー提督らが「海へ棄てた使い終わったあきびんを人々が拾い珍重した」という記録が残っています。
1889年に日本で初めてビールびんがつくられ、1916年(大正5年)に自動でびんを製造する機械が導入されました。これにより日本にガラスびんが普及することになりました。当時は、今のようにワンウェイではなく、消費者が商品を買い、びん商がびんを回収して、メーカーに販売するという循環が経済的に成り立っていました。
清涼飲料では、ラムネは買ったその場で飲んでいたのですが、サイダーはびんごと販売して、空きびんをびん商が回収して、メーカーが買い取って洗浄し再使用していました。新しいびんをつくるには非常に費用がかかるので、何度も再使用していた時代です。
早見
レモネードがラムネになったのですね。レモネード、レモネー、ラムネーと変わっていったそうですね。
リターナブルびんのピークは70年代
早見
そういえば、子供の頃の清涼飲料の記憶は、ガラスびんでした。リターナブルびんのピークはいつ頃だったのですか。
缶容器が一般化するまで、1970年代まではリターナブルびんが主流でした。正確な数字はわかりませんが、ガラスびんの生産量から推測すると、1976年、昭和51年ですね。
早見
ちょうどその頃、「コカ・コーラ」のびんは薄いグリーンでした。
今よりもう少し大きかったように感じました。
公文
それから「三ツ矢サイダー」、「リボンシトロン」、「チェリオ」、「ガラナ」などもありましたね。
「プラッシー」もありました。
早見
あの頃は、まだPETボトルは…。
公文
まだ登場していないですね。1982年以降になります。
早見
当時は、どのように買っていたのでしょう。
公文
小売店の店頭で買われて、家へ持ち帰るというケースは少なかったと思います。酒屋さんの配達が多かったですね。
ケースで届けてくれて、ケースで空きびんを持って帰ってくれました。リターナブルびんも含めてガラスびんの販売量と宅配の仕組みというのは、切っても切り離せない関係性にあると思います。
早見
配達されていた時代は、そこでまた会話が生まれたのでしょうね。今は何でも個人ユースになってしまって、人間関係が疎遠になって、会話がなくなっていくような気がします。「あ、ご苦労さん」と会話が生まれたり、配達したときのびんがぶつかりあうあの音など、寅さんの映画に出てきそうですが、生活の音っていいなあと思います。
そのリターナブルびんが、今ではかなり減ってしまっているのは残念ですね(次頁の図参照)。
リターナブルが主流だった時期と比べると、大幅に減りました。
早見
コストや環境負荷の点で、ワンウェイ容器の方が優位ということでしょうか。
公文
原料コストの面では、リターナブルびんは高くありません。ガラスから缶に変わり、そしてPETボトルに変わって、原価的には逆に高くなっているのです。リターナブルのガラスびんの場合は、じつは戻ってくるプロセスの中でさまざまなコストがかかるのです。
早見
いろいろな人が携わる分、人件費も含めてコストがかかるのですね。
公文
そういうものが商品、容器の原価に加わってくる。それからワンウェイの商品は、例えば段ボールのケースで届けて、そこで終わりです。リターナブルの商品については、お金をかけて頑丈なプラスチックケースをつくり、届けて回収する。そのケースが傷んできたら、また新しくつくる。リターナブルびん以外にも、諸費用がかかります。
リユースによる環境負荷低減への取り組み
早見
では環境負荷の面では、びんとPETボトルでは、どちらがよいのでしょうか。
公文
PETボトルについては、ここ3年ぐらい環境省とPETボトルリサイクル推進協議会と全清飲で、リターナブルできるのかどうか研究を続けてきました。
結論としては、ひとつは、PETボトルはとても軽く、ガラスびんは重いことから、輸送にかかる環境負荷、エネルギー使用量については、一定の距離を超えるとPETボトルのワンウェイの容器の方が、環境負荷が低いということがわかりました。
リターナブルのびんは、何度も使うために強度を高めて頑丈につくられています。頑丈につくるため、普通のワンウェイびんより製造時に資源とエネルギーを多く使うのですが、何度も使われることで、製造したときの負荷の高さが解消されていきます。何度も回らないと、環境負荷が高いままで終わってしまうので、一定の回転率と回収率という条件がつきます。
また回収率ですが、一度販売したものが例えば7割の回収率であったときには、2回転すると、もう半分しか残らないのです。戻らなかった半分を、また負荷の高い重いものをつくるとなると、環境的には好ましくないので、距離の要素、回収率の要素といったものがどうしても一定以上求められます。
PETボトルのワンウェイとガラスびんのリターナブルを比較したときに、回収率が90%以上で商品の移動距離が100キロ以内、この2つの要素がそろえば、ガラスのリターナブルびんの方がPETボトルのワンウェイより環境負荷が低くなります。しかし、100キロ以内の移動というのはナショナルブランドでは現実的にきわめて難しく、地産地消型の地域のサイダーやラムネ、そういったものに適しています。
早見
消費者の環境への関心が高まっていますし、最近は、自ら環境によいライフスタイルを実践する人が増えているように感じるのですが、なぜリターナブルびんの使用量が減少してきたのでしょう。
また、今後、何かを変えていこうという消費者の意識が高まっていくと、リターナブルびんの使用量も増えていくのでしょうか。
1976年をピークにずっと減り続けているのは、ライフスタイルの変化に伴って、消費者の商品の選び方や買い方が変わってきたからです。消費者が望んでいたのは、いろいろなバリエーションを持った多品種の商品であったり、容量の小さいコンパクトな商品でした。清涼飲料業界は、その消費者ニーズに応えるために商品の多様化を進めてきました。商品サイクルは短くなり、ワンウェイ容器が消費者に支持されるようになってきたのです。
しかし、節電意識の高まりの中で、ライフスタイルを見直そうという流れがあるので、われわれとしても距離の短いエリアで回転率を上げて、地域型のリターナブルの仕組みを提案していきたいと考えています。
早見
地サイダーから始めるということですか。
そうです。
公文
例えば、自治体が地元の何かをテーマにした物産が欲しいというときに、地元の水やフルーツを使ったサイダーをつくろうと、自治体と飲料メーカーが協力して中身をつくる。そして、流通業や地元のスーパーが応援して販売してくれる。さらにびんの回収事業者が入り、回収する仕組みができる。そうなると、リターナブルが回り始めるのです。
早見
回り始めて成立するわけですね。
公文
じつは、全清飲と中小企業会員の皆さんが中心になってつくっているサイダーの共通リターナブルびんがあり、各地で展開しています。今はまだ5カ所ぐらいで回っているだけですが、これが各地でつながって大きな輪になれば、びんの循環としてとても効率がよくなってきます。
早見
全国に広まっていくとよいですね。この「コカ・コーラ」のびんの形も、やはり「コカ・コーラ」だけのものですね。
はい、そうです。今は主に飲食店、ホテル、レストラン、レジャー施設といった業務用がメインです。
このように、リターナブルびんが主に使われているのは、業務用と宅配ですね。商品をお客様が買って持ち帰り、後で戻していただくというのではなく、サービスがそこに乗った仕組みで回っています。
公文
リターナブルが減っているといっても、余り品種数は減っていません。消費者の皆さんからすると、店頭にないからもう消えてしまったかのように思われてしまいますが、業務用の世界ではまだしっかりと回っています。
早見
温泉に行って、びんのジュースを飲むと、「いいね、懐かしいね」と話します。
公文
今の小学生にびんと栓抜きを渡したら、開けられるでしょうか。そのあたりは不安材料ですね。

リターナブルびん・ワンウェイびん使用量推移

*ガラスびんリサイクル促進協議会 資料

2.リユースに適さないPETボトル

なぜPETボトルはリユースに適さないのか
早見
今はPETボトルの商品が多くなりましたが、PETボトルはリユースできないのですか。
公文
安全性の問題で、PETボトルはリユースに適していません。PETボトルもガラスびんも、表面はツルツルしているように見えますが、PETボトルは大きく拡大していくと、スカスカのスポンジのような構造になっています。
例えば、中に毒性のものが入ってしまうと、表面に吸着されてしまって洗い流し切れない。そして次に何かを充填すると、吸着されたものが出てきてしまうのです。何か誤ったものを入れたときに洗い流し切れない、安全性を保証し切れないので、PETボトルはリターナブルには向かないのです。
ドイツなど海外に例はありますが、近年は大幅な縮小傾向にあります。
早見
PETボトルをリユースしているのですか。
公文
はい。外側が真っ白になるぐらいまで、何回も使い込まれています。
早見
そうなると、見た目の問題も出てきますね。ドイツのPETボトルは、分厚いのですか。
公文
かなり厚くて、叩くとカンカンと硬く響きます。安全性と見た目の問題もあり、やはりリユースにはガラスびんが一番適していると思います。ガラスびんは誤って使用されても、洗浄するときれいに全部落ちます。吸着や再溶出の心配がなく、中身保護の観点からも非常に安全な容器だからです。
早見
生協では、PETボトルのリユースを始めているところもあるようですが。
公文
ある生協さんでは、比較的短い距離で回して環境負荷を低くし使用されていますが、われわれとしてはどうしても、間違って使われて、薬品や化学物質が入った場合を想定せざるを得ません。業界としては、安全の担保が第一ですので。
しかし、ご自分たちのところで独自の洗浄ノウハウを持って洗われて、安全性の分析も万全といってリユースされる分には、それはもう生協さんのお考えですので。
早見
ガラスびんは、半永久的にリユースできるのですか。それとも少しずつ劣化していくのですか。
割れたり欠けたり、傷がつくこともありますので、およそ20回から30回ぐらいは再使用できます。
早見
例えばお水を飲んで、そのPETボトルを洗ってまた使うというのはよろしくないのですね。
公文
雑菌が繁殖するのです。唇や粘膜についている菌が吸い口に付着して、流しきれずに残ってしまうと、くっついたままそこで培養される状況になりますから、再利用はできるだけ避けていただきたい。
早見
娘たちが環境に興味を持っておりまして、PETボトルはとても身近なのです。「ママ、これ1回で捨てちゃうのもったいない」と、次の日またお水を入れて学校に持っていったのです。「それはだめよ」という話をして、水筒を持たせました。
公文
熱湯消毒すると、容器が縮んでしまいますし。
早見
そうですね。やはりPETボトルは、リユースではなくてリサイクルがよいのですね。

リユースとワンウェイPETボトルのCO2排出量
:2ℓミネラルウォーター用PETボトル

①オープンシステム(店頭販売)は、85%~90%の回収率を確保することが難しいため、ワンウェイの方が環境負荷が小さい。
②クローズドシステム(宅配販売)は、90%以上の回収率と輸送距離を100km未満等に限定すれば、リユースの方が環境負荷が小さい。
出典:P E Tボトルリサイクル推進協議会 年次報告書

「ドイツのノンアルコール飲料」容器構成の変化図(2008年版)
出典:PETボトルリサイクル推進協議会 年次報告書

3.飲料容器のリユースの課題

リユースを促進するための今後の課題
早見
消費者は、リユースのガラスびん製品を買うことが、環境に優しいことになるのでしょうか。
そうですね。回収率のお話がありましたが、まずは何回も使うということです。20回から30回ぐらい使える仕組みで回るリターナブルびんは、確実に環境負荷が低いといえます。しかし、リターナブルびんだから環境負荷が低いのではなく、あくまでも再使用の回数がしっかり守られているということが条件です。使用回数が少なかったり、輸送距離が長くなれば、CO2排出量は増えてしまいます。
また、リターナブルびんの効果というのは、資源ゴミの発生を抑える排出抑制(リデュース)や、1回ごとの容器製造にかかる資源の節約といった要素が大きいといえます。
早見
メインは業務用ということですが、消費者としては、今後どのようにサポートしていくのがいいのでしょうか。
それぞれの地域で、メーカー、ボトラーをベースにして、行政、事業者、それに消費者の方にも加わっていただき、みんなで連携しながら取り組める仕組みをつくって、地域に提案していきたいと考えています。
公文
びん再使用ネットワークやリサイクル関連のNPOの方が、盛んに活動されています。皆さん、基本は「リユース、リターナブルを優先すべし」とおっしゃいますが、なかなか輪が広がらないのが悩みです。
リターナブルは、特定の成立要件下で環境的優位性が働きます。回転率や回収率、距離の問題がありますが、それ以外にも、成立要件としては、リターナブルを回すために参画する人の輪というかネットワーク、そういうものがそろっていないと、成り立ちません。今はこういう状況になっていますので、地サイダーのようなきれいな循環の絵がかけるように、多方面に声をかけていく必要があると思っています。
早見
私たち消費者も、リユースのガラスびん製品を積極的に購入するなど、できる範囲でサポートしていければと思います。

ガラスびん
リユースの事例1

日本コカ・コーラ「コカ・コーラ ZERO」2010年ガラスびんアワード(ガラスびん協会主催)最優
秀賞

ガラスびん
リユースの事例2

Rドロップス
全清飲が東京容器包装リサイクル協同組合、びん再使用ネットワークと連携し、新しいリターナブルびん(Rドロップス)の試作に取り組む。

ガラスびん
リユースの事例3

「三島シトロン」
全清飲が提案する共通リターナブルびんにて展開するサイダー。

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