消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

ソフトドリンクLIFE
清涼飲料と健康のおいしい話

九州大学大学院 医学研究院 統合生理学助教
高木厚司(たかきあつし)

コーヒーは焙煎されることで美味しさが引き立つ
皮という容器には多様な機能が備わっている

1959年生まれ。愛知県出身。1984年九州大学医学部心療内科に入局。専門は、環境生理学、心身医学。2001年に簡易の遺伝子損傷評価法を開発し、「食」「環境」「健康」分野の総合コンサルティング事業を展開。2004年より(株)TASプロジェクト(TotalAnalysis & Solutions)の代表取締役を兼業。

地球における生物は、数十億年前の原始の海で誕生しました。血液が塩辛いのはその名残です。ミネラル豊富な体液を保持した私たちの身体は、皮膚という特殊な皮にくるまれることで乾燥した陸上でも干上がりません。

じつは、この保水機能を担っているのは、表皮と呼ばれる薄い膜です。表皮は、最外層からわずか1ミリ下にある基底層細胞が分裂増殖し続けることで、徐々に外側に移動しながら、ケラチン蛋白を豊富に含む無核で扁平な角質細胞層を形成しています。そして、規則正しく並んだ角質細胞の隙間を、セラミドという別の蛋白が埋める要領でその防水構造が完成します。*

*【参考】http://skin.cute.bz/skin2.html

皮膚はこの構造により、内部からの水分蒸散を防ぐだけでなく、外部環境からの侵襲(紫外線や酸素、化学物質等)や微生物の侵入を防いでいます。そして、その防衛機能を強化するために、基底層付近には免疫担当細胞や紫外線を吸収して活性酸素の遊離を抑えるメラニンを産生する細胞等が配置されているのです。

一方、皮という容器の機能は、ヒトに限らず、各種生物で独自の進化を遂げてきました。特に、タイムカプセルのように遺伝情報を保存しつつ、環境が整った段階で再生を果たさなければならない種子の皮には、多様な生理活性成分が含まれています。

そしてその成分は、外皮と内皮(薄皮)で特性が大きく異なります。一般に、内皮には果実や遺伝子情報を守る抗酸化成分が多く、外皮には外敵を排除する目的で酸化誘導(殺菌)成分が多く含まれるようです。

注目の抗がん作用も焙煎により活性化される

しかし、酸化成分は抗酸化成分と比較して構造的に不安定なものが多いため、熱や光、乾燥等で機能を失いやすく、取れたての素材を日光や温熱乾燥、遠赤焙煎、熱湯抽出等の加工を施すことで、抗酸化成分の力価が優位になります。

例えば、コーヒーの生豆はえぐさがあっておいしくありませんが、適度に焙煎することで好ましい香りが立ちます。この「風味」や「おいしさ」の際立ちは、摂取する側のヒトの生存戦略にとって有用な成分が強化されたことを、私達の本能が察知したことを意味します。実際、抗がん作用が注目される抗酸化ポリフェノールのコーヒー酸の含量は、生豆よりも焙煎後の方がはるかに高いのです。

このように、天然素材の効能を考える場合、必ずしも生素材がベストとは限りません。適切な一次加工(乾燥、加熱、破砕)や保存法(脱酸素の包装)、飲む際の工夫(水の硬度や温度、他成分の添加)などで、その有効成分や効能が大きく変わることも覚えておくとよいでしょう。

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