消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

企業探訪(17)
サッポロ飲料(株)本社
リポーター:中村まり

革新的なオフィスリニューアルで企業ビジョンの実現を目指す

 2008年1月より新体制となったサッポロ飲料株式会社。さまざまなアプローチで“新しいサッポロ飲料”を目指し、業務に取り組んでいます。今回は、大規模な取り組みとして行ったオフィスリニューアル、サッポロ飲料を支え続けて100周年を迎えたリボンブランドについてお話を伺いました。

フリーアドレス制により、社員はその日の仕事に合わせて席を決めています


オフィスリニューアルで風通しのよい職場を実現

今回からは、商品づくりの現場となる工場だけでなく、最新のオフィスや開発研究室など、各社自慢の施設や設備などもご紹介していこうと思います。

その第一弾として今回訪問したのは、東京・恵比寿にあるサッポロ飲料株式会社さん(以下サッポロ飲料)です。サッポロ飲料といえば、三角リボンのキャラクター「リボンちゃん」でおなじみの『リボンシトロン』が、一昨年100周年を迎えたばかり。息の長いブランドを守りながらも、2008年1月、再生計画として“新しい企業”へ生まれ変わるために、ユニークな取り組みを行っている企業でもあります。

サッポロ飲料は今、企業に新しい風を吹き込む革新的な取り組みを行っています。その第一歩となったのが新しい企業ビジョンづくりです。

「どういう企業でありたいのか、何を目標に事業をやっていくのかなど、20~30代の社員を中心に意見を聞きながら詰めていきました」(広報グループ担当部長・古林秀彦さん)

そして生まれた言葉が『すべての笑顔のために。限りない情熱で記憶に残るおいしさを』。このビジョンを実現するため、サッポロ飲料は2008年12月、本社オフィスの斬新なリニューアルを行いました。

「商品の絞り込みや経費の削減をしながらも、メリハリをつけ働く環境はきちんと整える必要があると考えたのです」(古林さん)

これまでのサッポロ飲料が抱えていた一番の課題に「各部門の持ち場意識の強さ」がありました。自分の仕事には没頭するのに、他の部署には無関心になりがちな体質を変え、部署が違っても手助けや助言をしあえるような、風通しのよい風土を作りたい。それを実現するための器としてリニューアルされたオフィスは、創造性と革新性に富んだ空間でした。

入口には、缶やペットボトルなどさまざまな飲料容器の上に人々が暮らすイメージが描かれ、「この星をもっと笑顔に」というタグラインが掲げられています。これは、企業ビジョンをビジュアル化したもので、飲みもので星をイメージし、その上で暮らす人々に笑顔を届けたいという思いを現しています。

また、サッポログループ初となるフリーアドレス制を採用。各部門の社員が積極的に交流できるようにしています。“自分の席”はなく、広々とした執務室のあちこちに座席が設置されています。荷物やパソコンは各自ロッカーで管理し、出社したら好きな場所で仕事をします。この形になってから「部門間の壁は確実になくなった」(古林さん)のだそうです。

開発中の商品を敢えて隠さないというブランド戦略室はガラス張りです。芝生を模した緑のカーペットが広がるフリースペース「Hi・Ro・Ba」には、小さな泉や等身大の人形のオブジェなどもあり、まるで公園のよう。一体は腕組み、もう一体はバンザイをしているこのオブジェはお客様からいただいたご指摘やお誉めの言葉を貼る“掲示板”なのだとか。

社内の風通しをよくするだけでなく、社外からも新しい風を呼び込むため、別業界でキャリアを積んだ人材を募る「キャリア採用」なども行っています。「他所で働いてきた人は、その人自身のスタイルがあり、物の見方や考え方に新しい刺激を与えてくれることが多いのです」(古林さん)

長い歴史をもつ企業にありがちな同質化に陥らないためには、新しい発想や柔軟な思考ができる企業体質を保ち続けるための努力が必要なのですね。

飲料容器の“星”に暮らす人々のイメー
ジが壁一面に描かれたオフィス入口

公園の芝生のような緑のカーペットが敷き詰められたHi・Ro・Ba。奥にあるガラス張りの部屋がブランド戦略室

真っ赤なカーペットが敷かれた一角が打ち合わせスペース。とても開放的です

女性専用のリラクゼーションスペース。花の壁紙やインテリア小物は、女性社員が少しずつ手作りでそろえられたもの

Hi・Ro・Baの一角にある雑誌や資料の閲覧スペースもこんな感じに。色とりどりのソファやバランスボールなどもあって、オフィスの堅苦しさはまるでありません

100周年を迎えた『リボンシトロン』

1909年当時に販売されていた『シトロン』のラベル。おしゃれでハイカラなデザインですね

サッポロ飲料のあゆみについても伺いました。創業は1957年。サッポロビール株式会社(現サッポロホールディングス株式会社)と米国法人カナダドライ社の共同出資による「国際飲料株式会社」がルーツです。しかしそれを遡ること約50年、サッポロビールの前身・大日本麦酒は、ヨーロッパで体によいと飲まれていたレモン水を参考に、1909年、柑橘系清涼飲料水『シトロン』を発売していました。

「シトロンというのはレモンに似た柑橘類の名前です。これが『リボンシトロン』のはじまりで、サッポログループの飲料水事業のスタートなんです」(古林さん)

 

リボンブランドとリボンちゃん

1911年には姉妹品の『ナポリン』も登場。売上を伸ばしていきました。しかし、逆にそのおかげで模倣品も市場に出回るようになってしまいます。そこで、ほかと区別できるブランド名をつけることになり、300通を超える社内公募の中から選ばれたのが「リボン」という名前でした。飲み物のブランド名にリボン。どうしてでしょう?

「当時リボンが大流行していたことが背景にあります。時代は大正。大きなリボンを頭につけるのが、とてもハイカラだったんですね」(古林さん)

新しい味も次々と増え、一時は、コーヒー、コーラ、ガラナといった姉妹品もあったのだそうです。

リボンブランドといえばブランドキャラクターのリボンちゃん。彼女はいつ頃生まれたのでしょうか。

「彼女が生まれたのは1957年。CF用に作られたキャラクターなんです」(古林さん)

リボンちゃんの登場するCFの反響は予想以上に高く、特に子ども達の間では人気のキャラクターになりました。ポスターやラベルにも頻繁に登場。リボンブランドの顔として定着することになりました。

一時、広告や商品に登場する機会が少なくなった時期もありましたが、『シトロン』誕生100周年の2009年に、デザインを一新して再登場していま す。

「シンプルな線画が立体的になり、顔つきもかわいらしくなりました。一緒にいた犬にも“シトロン”という名前をつけ、リボンちゃんの相棒という設定にしています」(古林さん)

生まれ変わったリボンちゃん。パッケージごとにさまざまな表情をしていてかわいいですね。これからもリボンブランドとともに愛され続けていくことでしょう。

世界初! 果実飲料にペットボトルを採用

リボンブランドの歴史をひも解くなかで、清涼飲料史上とても大きな役割を果たした商品があるのをご存じでしょうか。それが、1982年に販売された『リボンオレンジつぶつぶ1リットル』です。

じつは果実飲料容器としては世界で初めてペットボトルを使用した商品なのです。それまでペットボトル入りの果実飲料は、製造工程でボトルが変形するという問題があったため実現不可能とされていました。しかし、サッポロ飲料ではこの問題を容器会社との共同技術開発により解決。世界で初めてペットボトル入り果実飲料の商品化に成功したのです。

広報グループ古林部長から、商品一つひとつについてたくさんのエピソードを聞かせていただきました

日本で初めて果実飲料の容器にペットボトルを採用した『リボンオレンジつぶつぶ1リットル』

青いボトルが一昨年100周年を迎えた『リボンシトロン』、オレンジ色のボトルが今年100周年を迎える『リボンナポリン』(北海道限定販売)

「充填の技術も含めて、当時はまだ未知の分野だったと聞いています。それまで果実飲料用容器の主体だったガラスびんは、品質保持的には優れた容器なのですが、取り扱いには注意が必要です。ペットボトルの“軽い、割れない”というメリットは大きかったのでしょうね」(古林さん)

今でこそペットボトル入りの果実飲料が当たり前のように売られていますが、当時はそんな苦労があったのですね。試行錯誤を繰り返しながら容器や技術を改良し、それを商品づくりに反映していく。長く愛されるブランドというのは、こうした見えない努力で支えられているのだと改めて感じました。

子ども達と一緒にものづくりの楽しさを再認識

サッポロ飲料では、ものづくりの楽しさを子ども達に伝える社会貢献活動の一環として「炭酸飲料手作り教室」を開催しています。

「以前、社員の子どもに向けたイベントとして行ったとき非常に好評だったので、それをもっと多くの子ども達にも楽しんでもらえたらと思ったのがきっかけです」(古林さん)

昨年は、恵比寿ビール祭の会場や、本社の真向かいにある地元の加計塚(かけづか)小学校で開催されました。「好きな色と香りを組み合わせて自分だけの飲料を作るだけでも面白いですし、できたものを友達と飲み比べる楽しさもある。子ども達が喜んでくれたことが何よりうれしかったです。そして、そんな彼らの表情を見て、自分達もまたものづくりの楽しさに改めて気づかされました。今後も続けていきたい取り組みです」(古林さん)

逆に、子ども達からサッポロ飲料にオファーがくることもあります。2009年8月から11月にかけて、北海道千歳高校国際流通課の課題研究に協力し、生徒が考えたコンセプトに基づいた清涼飲料水をつくるお手伝いをしました。

「現地へ足を運んだのは二、三度ですが、実際の商品開発と同じように、時間をかけて本格的に開発しました。ラベルも生徒達の手書きラフから、実際のデザインを起こしています」(古林さん)

こうして作られたのが『真赤な宝石』です。この素敵なネーミングも、もちろん生徒達の案。千歳高校の生徒達はとても喜んでくれたそうです。将来サッポロ飲料に入りたいと思うかもしれませんね!

「少しでも地元や社会に恩返しがしたい、という思いからこういった取り組みを行っています。生徒達や地元の方々との交流を通して、私たちもいい刺激をもらえます」(古林さん)

本社ビルの向かいにある加計塚小学校で行われた炭酸飲料手作り教室。“社員先生”のお手本を見つめる子ども達の視線が熱い!

こちらが千歳高校の生徒達と一緒に作った『真赤な宝石』(試作品)。赤と緑のコントラストがとても美しいラベルです

どこの会社とも違うユニークな会社を目指して

サッポロ飲料株式会社
所在地:東京都渋谷区恵比寿
創業:1957 年
従業員:276 名(09 年12月31日現在)

最後に、企業としての今後の展望やビジョンについてお話を伺いました。

「どこの会社とも違うユニークな会社でありたいと考えています。商品そのものがユニークであるということはもちろんですが、企業としての考え方や運営の仕方も含めてユニークでありたい。商品数を大幅に絞り込んだのもその一環です。また、飲料業界は年間1000以上の新商品が生み出される業界ですが、うちは年間十数点しか新商品を出していません。業界的には特異な取り組みですが、これがサッポロ飲料流なんです」(古林さん)

じっくりとアイデアを練りながら、厳選された商品を世に送り出していくわけですね。今後はどのような観点から商品開発をされるのでしょうか。

「お客さんの顔を思い浮かべながら商品をつくっていきたいです。マーケティングのデータではなく、その商品を飲んでくれる人、飲んでいるシーンを念頭に置いたものづくりを心がけたいですね」(古林さん)

消費者の嗜好が多様化した昨今、飲む人が見える商品づくりは言葉で言うほど簡単なものではありません。しかし新しい風を社内に取り入れ、さまざまな人の声に耳を傾けているサッポロ飲料さんなら、そんなに難しいことではないのかもしれない。今回の取材を通してそんなふうに感じました。

 


探訪後記

オフィスの中に一歩足を踏み入れたとたん、わあ!と歓声をあげてしまいました。カフェ、池、広場、カラフルな椅子、女性専用のリラックススペース。こんなカラフルで素敵なオフィスならきっと斬新なアイデアが次々と生まれてくるはずです。所属部署を問わず、社内のいろんな人同士が笑顔で会話している姿を見かけ、私もこんな会社で働いてみたいな、と思いました。

中村まり

中村まり「めざましテレビ」など情報番組のリポーターや各種企業のCMキャラクターを務める。持ち前の好奇心と行動力を活かし、現在TV・ラジオなどのリポーター、キャスターとして活躍中。


(撮影/コサイワジュン)

 

vol.24 目次へ戻る

ページトップへ
バナー
バナー
バナー