消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
「猛暑の反動」克服し飲料市場の底力を発揮しよう

今回は清飲記者会の金井順一さんに、2010年の市場動向やその背景、そして2011年の清涼飲料業界の展望についてご執筆いただきました。

今年こそ、まさに飲料業界の真価が問われる年

昨年は記録的猛暑で3年ぶり増

2011年の飲料商戦が開幕した。昨年は、夏本番の記録的な猛暑もあり飲料販売量は前年比約3%増を達成した模様で、業界には3年ぶりに明るさが戻った。上半期は引き続き消費者の節約志向が尾を引き、天候不順も重なったが、梅雨明け以降、列島を襲った猛暑により飲料需要は急変。しかも、記録づくめの歴史的酷暑となり、止渇飲料を中心に急増。昨年の飲料界は夏本番2カ月ですべてを象徴した。

だが、猛暑特需に酔ってばかりはいられない。今年の経済環境は引き続き不透明感が拭いきれず、節約志向が続く可能性は強い。さらに、最大の課題は原材料の高騰だ。砂糖、果汁原料、コーヒーや、缶・ペット、段ボールなどの副資材が軒並み高騰することが予想され、企業にはコスト競争力が求められる。しかも、記録的な猛暑の翌年だけに需要の反動も懸念される。2011年は飲料にとってまさに真価が問われる年になるのは確実で、飲料市場の底力を発揮することが期待される。

記録的猛暑による特需とその反動

猛暑に沸いた2010年の飲料業界だが、その動向を時系列で追った。昨年第1四半期は、各社が3年連続のマイナス成長を阻止すべく、消費者の厳しい選択眼に対応した付加価値型の新商品を投入した。だが、節約志向を反映し、ペット飲料を買わずマイボトルにお茶を入れて携帯する「水筒男子」なども出現。そのため、茶系飲料やミネラルウォーターの落ち込みが顕著となった。天候も、一部地域で季節はずれの降雪となるなど寒冷な異常気象に見舞われ、天候、消費動向、経済環境のいずれもが先の読めない状況だった。

第2四半期は、春先にテコ入れした基盤商品が息切れを起こし、これをフォローする新製品も少なかったため、引き続き販売量はマイナスで推移。だが、序盤のヤマ場だった大型連休は、25年ぶりといわれる休日すべてが晴天に恵まれ、飲料需要を押し上げた。

第3四半期に入って状況が一変。梅雨明け後、猛暑が列島を襲い、6月までの暗いムードを一掃した。連続猛暑日や平均気温、熱帯夜などが記録づくめの天候となり、まさしく歴史的酷暑となった。

品目別では、スポーツ飲料が倍増ペースの売り上げを記録し、熱中症対策報道が高まる中で需要は急増した。炭酸も急回復し、踊り場だった茶系飲料やミネラルウォーターも上昇気流に乗るなど、「お天気マーケティング」の威力を証明した。各地の観光地や行楽地の飲料自販機はフル稼動。コンビニの週販も一気に跳ね上がった。

第4四半期は残暑が長引いたため、秋需メインの缶コーヒーが大きく響いた。9月はタバコ値上げにともなう仮需に沸いたコンビニだが、10月はその反動が直撃。その穴埋めとして缶コーヒーに期待する部分が大きく、メーカーは新製品を中心とした新戦略を展開したが、残暑には勝てなかった。こうした経過を経て2010年の飲料商戦が終了。本番2カ月の記録的な猛暑効果で販売量は前年比約3%増で着地したが、課題も山積した。

上半期を中心に消費者心理は冷え込み、引き続き生活防衛意識が強まり、飲料にもデフレ化が浸透。結果的には7、8月の猛暑で短期的には改善したが、年間を通してこの動きは払拭できなかった。各社から智恵を絞った新製品が発売され、「勝負の年」だったはずだが、新製品商戦も決め手に欠けた。

2011年、各社に求められる課題とは

昨年はスポーツ飲料、紅茶飲料が急増

主要品目別の動向をみると、猛暑と残暑による秋需の立ち上がりの遅れが缶コーヒーに響き、コーヒー飲料全体では約1%減で着地した。缶コーヒーは、上位ブランドによるパワーゲームが展開され、微糖、無糖戦争が展開された。

ミネラルウォーターも引き続き厳しい戦いだった。猛暑の恩恵で短期的には伸びたが、通年は約1%減で推移。夏本番の水分補給報道の多くが「水よりスポーツ飲料」を推奨し、スポーツ飲料に遅れをとった。茶系飲料は各社がブランド戦略を見直し、味・容器・デザイン刷新など大規模なテコ入れを図ったが、総市場を動かすまでには至らなかった。だが、紅茶飲料は最大手がユニークな新製品でヒットを飛ばし、さらに新規参入も手伝って市場が活性化。販売量は約13%増を記録した。また猛暑で麦茶飲料も好調だった。

もっとも猛暑の恩恵を受けたのはスポーツ飲料だ。猛暑に加えて連日の水分補給報道が追い討ちをかけ、品薄状態が続いたほどで、自販機の売り切れを示す赤ランプも目立った。単月販売量で記録を更新したブランドも出た。サッカーのワールドカップで日本代表の頑張りも手伝って売場は大いに盛り上がった。

不透明感を打破し成長戦略を

今年も経済環境は不透明感が拭いきれず、飲料もその影響をうけることは間違いない。引き続き市場環境は厳しく、昨年の猛暑の反動により、2011年の販売量は、前年比横ばい以上は難しいとも言われている。そのため、メーカーには賢い経営判断と賢い経営選択が求められ、今年は生き残りをかけて真価が問われる一年になりそうだ。「成長戦略」の中心である 商品戦略では、おいしさとともに健康や簡便性などプラスアルファの付加価値が求められ、市場分析に基づいたボーダーレスな商品開発に取り組む必要がある。中身とともに容器のイノべーションも求められる。「構造改革」では、事業所、営業拠点、工場の再編や、SCM改革、革新的な製造ラインの導入などが課題。グループと連携した最適生産体制を推進し、コスト競争力の強化に取り組む必要もある。収益性の低い事業の見直しなど構造改革も必要だ。しかも、今年は砂糖、果汁原料、コーヒーや、缶・ペット、段ボールなどの副資材が軒並み高騰することが予想され、企業にはコスト競争力が求められる。

「営業戦略」は、提案型営業が前提だが、無駄な値引きの競争は企業の体力が消耗するだけであり、早急な是正が求められる。市場価格の正常化を図り、利益を上げるために売上げを拡大していくことが重要課題だろう。

人口減少が確実なだけに「海外戦略」も焦点となる。ここ数年来、大手から中堅までヨーロッパ、中国、東南アジア、オセアニア、アメリカなど海外戦略が加速しており、買収や資本参加、販売提携などM&Aが活発化している。各社は事業領域の拡大の一環として長期的に捉えており、現地生産や現地販売、輸入販売、輸出展開など取り組みはまちまちだ。

大手各社が持株会社制に移行したことにより、M&Aの取り組みが活発化。今年はこの動きがさらに加速しそうな気配だ。特に各社は中国及びアジア展開で具体的な方向性を模索しており、今後の展開が注目される。

(金井順一)


 

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