清涼飲料の文化史
食文化史研究家・西武文理大学客員教授
永山久夫
コーヒーは文明開化の味[明治時代の清涼飲料水]
日本人は江戸時代にすでにコーヒーの味は知っていたが、評価はよくない。後になって江戸一の狂歌師として名をはせる太田蜀山人(しょくさんじん)(一七四九~一八二三)が、長崎奉行に身を置いていた頃に口にしている。しかし、感想はさんざんで「こげくさくて味わうに堪えず」と日記に残している。
その後、黒船が来航するようになり、ヨコハマやナガサキなど開港地に西洋料理店がオープンし、献立にコーヒーものるようになった。明治時代に入ると、その苦い飲み物はハイカラな文明開化の味に映った。
明治五年(一八七二)の『新聞輯録』に「食後は必ず珈琲を飲むべし。脂油を除く効あり」とあり、コーヒーの効能も知られていたのである。明治九年(一八七六)には浅草にコーヒー茶屋が出現したといわれている。
明治二十一年(一八八八)に、台東区の下谷に「可否茶館」が開店。現代につながる本格的なコーヒー店であった。紳士や淑女たちのデートの場としても人気があった。
コーヒーの味の特徴は苦みにある。独特の香りや苦味は抗酸化成分のクロロゲン酸で、ガンの予防で注目されている。眠気をさますカフェインには脂肪の燃焼を促進する作用もあり、ダイエット作用も期待されている。
イラスト:中川 学















