消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

ソフトドリンクLIFE
清涼飲料と健康のおいしい話

九州大学大学院 医学研究院 統合生理学助教
高木厚司(たかきあつし)

夏場に高い脳梗塞のリスク
水分と同時に適切な塩分補給を
塩分摂取の新目標値——さらに味噌汁1杯分の減塩を

1959年生まれ。愛知県出身。1984年九州大学医学部心療内科に入局。専門は、環境生理学、心身医学。2001年に簡易の遺伝子損傷評価法を開発し、「食」「環境」「健康」分野の総合コンサルティング事業を展開。
2004年より(株)TAS プロジェクト(TotalAnalysis & Solutions)の代表取締役を兼業。

 今年の4月に、日本人の食事摂取基準の改訂版(2010年版)が厚生労働省から発表されました。そこに提示された数値は、向こう5年間の日本における栄養指導の基準値となります。

 その中でも特に注目されているのが、塩分摂取の目標値が引き下げられたことです。具体的には、成人男性が1日10gから9g未満(成人女性は8gから7.5g 未満)とされました。およそ、味噌汁1杯分の減塩です。

 量の多少はあるものの、清涼飲料水にも塩分が入っているものがあります。たとえば、ナトリウム含有量として表示されている場合でも、その値の約2.5倍が食塩に相当します。カロリーだけでなく、塩分含有量にも気を使う必要がありそうです。

 ところで、国土の四方を海に囲まれている日本人は、世界的にみても塩分摂取量の多い民族になります。終戦直後の若年の肉体労働者は、1日15g以上の摂取が普通でしたが、その後の食生活の激変により、最近の国民健康・栄養調査では12g程度まで減少しました*。それでも、1日6gを目安とする国際標準からすると約2倍です。医学的にも、単に血圧を下げる目的であれば、1日3g程度の塩分制限が有効であることがわかっています。

*【参考】http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-01-11.html



夏場の持続性の発汗は塩分不足を引き起こす

 しかし、その原則を適用できないのが、暑熱環境や激しいスポーツで大量の汗をかいた時です。汗1リットルには、塩分が約5g含まれているので、発汗量によっては、目標値をはるかに超える塩分を補給しなくては欠乏症に陥ります。

 スポーツ飲料の多くに、1g/リットル程度の塩分が含まれているのは、このような理由からです。

 さらに、夏場に特に注意しなくてはいけないのが、高齢者の低ナトリウム性の脱水です。酷暑による食欲低下と相まって、たとえ運動量が少なくても、体温維持のための持続性の発汗が慢性の塩分不足を引き起こします。

 実際、夏場においては、高血圧による脳出血よりも、脱水による脳梗塞のリスクの方が高いのです。そのため、水分と同時に、適切な塩分補給が必須です。

 海洋性モンスーンという高温多湿な気候条件に暮らす日本人が、他国民より塩分摂取を好む傾向にあるのは、じつは、本能的な生体防御反応なのかもしれません。

 

vol.22 目次へ戻る

ページトップへ
バナー
バナー
バナー