FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
割り材飲料の変遷と今後の市場予測
アルコールと割るだけで、カクテルやサワーを簡単に作ることができる割り材飲料。バーや居酒屋など外食産業の台頭とともに、市場を拡大し、現在も好調な伸びを見せています。
今回は、割り材飲料の歴史や今後の市場動向について、清飲記者会の戸田雅雄さんにご執筆いただきました。
外食産業とともに市場を拡大した割り材飲料
清涼飲料には元来、「おいしさ」と「楽しさ」を訴求する商品特性があるが、アルコールと割ることで様々なバリエーションを生み出せる側面がある。そして清涼飲料マーケットには、このアルコールで割ることを目的に作られた「割り材飲料」と言われるカテゴリーが存在し、その長い歴史ゆえ老若男女を問わず愛飲されてきた。
割り材飲料には、洋酒用(ハイボールやカクテルなど)、焼酎用(ビールテイストやサワーなど)に大別され、昨今の炭酸ブームから洋酒ではハイボールが好調に推移、またバリエーション化が進んでいる焼酎用割り材も順調に市場を拡大している。今号では、東京の下町に根を張る居酒屋などで、独自の発展を遂げた焼酎用割り材飲料にスポットをあてて、市場特性や今後の見通しなどを検証してみた。
始まりは当時高価だったビールの代替品
焼酎用割り材飲料の歴史は1950年前後が、その始まりと言われている。当時はまだ高価だったビールの代替品として、焼酎と割る飲料が急速に広がりを見せ、主に関東エリア中心の居酒屋などで浸透を見せた。元々は、甲類焼酎と割って安価にビールテイストを楽しむことが飲用目的だったが、1980年代から果汁フレーバーと炭酸を割ったサワー(レモンハイなど)が台頭、同時期に製品化されたウーロン茶飲料も焼酎の割り材用途として消費量を増やすなど、味覚的な部分でも急速に広がりを見せ、一過性のブームではなくひとつのジャンルとして認知されるまでに至った。
“割るだけ”という単純な調理方法から無数の組み合わせが生み出され、料飲店や消費者の細かいニーズにも柔軟に対応できたことが、当時の急速な拡大を支えた最大の要因と言えよう。また、もともと業務筋製品として拡大した割り材飲料だが、手軽においしく作れることから、後には家庭内での需要にも広がりを見せた。
焼酎と割って居酒屋の看板飲料「サワー」に
古い歴史を持つ焼酎用の割り材飲料だが、本格的に市場を形成したのは1980年に入ってからであろう。既に発売されていたビールテイスト炭酸飲料に加え、前述の通り「サワー」が新たに市場参入したことが、甲類焼酎、割り材飲料の両方の需要を後押しした。
因みに甲類焼酎の歴史を振り返ると、戦後大きなブームは2度あったことがわかる。一度目は、終戦直後で食糧難の当時、米や麦を原料としない甲類焼酎は急速に生産量を増やし、1950年代半ばには最初のピークを迎える。以降は、高度成長期(1950年代中盤~1970年代中盤)におけるウイスキーの台頭により生産量は減少したが、前述の通り1980年代初頭から沸き起こった酎ハイ及びサワーブームにより甲類焼酎の生産は再び上向いた。無味無臭に近い複式蒸留の甲類焼酎と割ることから、独特の焼酎臭もなく、さっぱりとした味わいが若い女性にも広く受け入れられ大きなブームとなった訳だ。
中小メーカーを中心に発展大切に育てられた割り材飲料市場
中小企業が開発・販売していた焼酎用の割り材飲料だが、これらのブームにより、大手飲料メーカーも市場参入へ触手を伸ばし始めた。元来、焼酎を割って飲む、という飲用方法は、焼酎臭の強かった大正時代に、中小清涼飲料業者が「梅割り」、「ぶどう割り」などを提案・提供したことに端を発しており、戦後直後の粗製焼酎時代にもこれら割り材飲料を開発・発売に注力した経緯がある。中小清涼飲料業者が長きに渡り苦労して開発した製品でもあり、大手の参入は死活問題といえる。そこで、ブーム真っただ中の1982年に、中小の飲料メーカーで構成される全国清涼飲料工業組合連合会と全国清涼飲料協同組合連合会は、いわゆる分野調整法の主旨に則った「しょうちゅう(焼酎)割飲料の分野に関する要 望書」を関係する事業者等に提出、これにより大手との協調が図られ、現在まで市場は健全な発展を続けている。
近年も好調な推移、炭酸水2割以上の伸びも
グラフにここ3年間の清涼飲料総市場、サワー・ビール風炭酸飲料、炭酸水の増減をまとめてみた。清涼飲料総市場は、世界的な不景気や天候要因から08年、09年と連続で市場が縮小しているが、サワー・ビール風炭酸飲料(割り材飲用が主なコンセプトのもの)、炭酸水ともに好調な推移を見せ、特に炭酸水では、08年、09年とも2割以上の高い伸びを記録している。輸入の炭酸ミネラルウォーターの影響などで「直接飲用が増えつつある」との指摘もあるが、昨今のハイボールブームが直接影響しているものと見てよいだろう。ウイスキーの国内生産量は、08年、09年連続で増加しており、一連のブームも少なからず影響しているようだ。
また、甲類焼酎と割るサワー用やビール風味の割り材飲料も、フレーバーのバリエーションや健康イメージの訴求などから、好調に推移している。レモンやグレープフルーツなどの果実をその場で搾る“生搾り”も飲用者の受けがよく広く普及しているが、1杯あたりの値段はやや割高で、直接競合はしていないようだ。
消費者のニーズに応えこだわりのある商品開発が必須
アルコールと共に成長してきた割り材飲料。今後の見通しはどうだろうか。酒類業界では、引き続き低アルコール飲料への流れが続くものと予想され、そういう意味では割り材メーカーにとって、当面追い風が続くことが予想される。居酒屋など業務筋では、味の多様化を望む消費者も多く、中小ならではの小回りの効いた商品開発でこれらのニーズに応え、更なる拡大も可能となろう。
半面、大手酒類メーカーが販売する缶チューハイが新たなライバルとして台頭している。缶チューハイは、大手量販などで清涼飲料を下回る1缶100円前後で販売されており、多彩なフレーバー展開、アルコール度数を高めた商品など消費者の購買意欲を刺激する商品開発により、その販売量は増加の一途を辿っている。割り材飲料の需要が家庭用でも好調に推移していることから、その影響は今後更に増大することが予想される。これらに対抗するには、細かいニーズに応えることはもちろん、高品質商材など“こだわり”の商品開発も必須となろう。また、消費者への健康イメージの訴求や健康感の強い新たな商品開発にも期待したい。
(戸田 雅雄)















