消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

循環型社会を築くための第一歩は、「ポイ捨て」をなくすことであると考えています。
今回は、㈳食品容器環境美化協会の一員として清涼飲料業界が取り組んでいる、まち美化推進活動について語り合っていただきました。

[鼎談]長嶺勝則 岡 哲義 早見 優
消費者最前線! お客様満足の実現に向けて

(写真左から)
長嶺勝則/日本コカ・コーラ(株)お客様相談室 室長/消費生活アドバイザー
早見 優/聞き手
岡 哲義/サントリービジネスエキスパート(株)お客様リレーション本部 VOC推進部長

長嶺 勝則
(ながみね かつのり)
2003年、日本コカ・コーラ(株)に入社、お客様相談室室長。2007年、コカ・コーラシステム13社による全体宣言『お客様満足のための基本方針』を主導。消費生活アドバイザー
早見 優
(はやみ ゆう)
日本生まれ、3歳から7歳までグアム、7歳から14歳までハワイで育つ。 90年上智大学比較文化学部日本文化学科卒業。82年にデビュー以来、歌手・俳優・DJ等幅広い分野で活躍。92年にはブラジルで行われた地球サミットに NGO団体、地球女性連絡会代表として参加。現在もイベント・トークショー多数参加。
岡 哲義
(おか てつよし)
1955年生まれ。上智大学経済学部卒、1979年サントリー(株)入社。2010年4月よりサントリービジネスエキスパート(株) お客様リレーション本部 VOC推進部長

1.お客様相談室について

「お問い合わせ」が8割以上
早見
じつは私、何度か電話したことがあります。そのときの対応がとてもよくて、感心しました。年間にどのくらい、問い合わせなどがあるのですか。
長嶺
私どもで年間8万件程度です。毎日300件前後のお電話やメールを頂戴してお客様とコミュニケーションしています。その中の約8割がお問い合わせです。
私どもはお酒と飲料の両方ですので、合わせて09年度は12万件弱で、半分強が飲料です。そのうちの85%がお問い合わせ、15%がご意見やご指摘です。
早見
お客様相談室というと、苦情に対応する大変な部署というイメージを持っているのですが。
長嶺
確かにご指摘も頂戴します。ご指摘にきちんと対応することは企業のお客様相談室として当然期待されていることであり、この点は変わらないと思います。むしろこれからは、これらのご指摘やお問い合わせの中で寄せられるお客様のご意見やご要望をいかに汲み取っていき、企業活動に反映させるかだと感じています。その思いの表れとして私どもは、「苦情」や「クレーム」という言葉は使わず、「ご指摘」と表現しています。
私どもも、苦情やクレームという言い方はしません。94年からは、すべてご指摘と表現しています。
早見
なるほど、今まで抱いていたイメージとは、全く違いますね。
現在はコミュニケーションの場
早見
いつ頃できたのですか。
長嶺
私どもは91年に消費者情報室として開設しました。それ以前は、各エリアの製造工場を管轄している私どものボトリング会社の電話番号を載せていました。
お客様の専門部署という意味では76年ですが、今はお客様の声(VOC=Voice of Customer)を活かしていく企業活動という意味で、昨年からVOC推進部と部署名も変えて取り組んでいます。
早見
消費者からのご指摘は、この10〜20年で変わりましたか。
長嶺
これまで私たちが同じ生活者として社会通念(当たり前)と考えてきた食生活の常識や考えがどんどん風化していると感じることが多いですね。例えば、清涼飲料水には防腐剤が使われていないので開栓後は生ものと同じなのですが、開栓後に長期保管したり、常温で保管したために製品が劣化するケースは非常に多いです。そこで私たちは、社会常識と考えられることでもあえて積極的に情報発信して、消費者の皆様へ注意喚起を行っています。
07〜08年に冷凍餃子事件がありましたね。あれから、食の安全・安心に対するお問い合わせが非常に増えました。賞味期限や保存方法、原料や成分に関するお問い合わせです。また、私どものコマーシャルへの関心も高く、「コマーシャルで見たタレントの服のブランドを知りたい」などのお問い合わせもあります。
早見
そういう類いもあるのですね。スクリプトはお持ちですか。
全部持っています。
長嶺
確かに口紅のメーカー名や色番、マニキュアの型番までご質問をいただくことはありますね。TVCMなど私たちのクリエイティブを通じて関心を示していただいたので、これを機会と捉えてできるだけお答えできるよう事前に詳細情報を準備しています。
より身近に感じられる存在に
早見
安全・安心の点からも消費者の関心は高いでしょうね。
長嶺
お客様の中には怒っている方も、不安や心配を感じている方もいます。私たちは、お客様のお気持ちをしっかりと受け止め、寄り添うことが大切だと考えています。食の安全は安心の大前提で、お客様からすれば食品メーカーに対する当然の期待です。しかし安心には、精神的な要素が多く含まれており、お客様とのコミュニケーションが重要だと考えています。
そのお客様が栓を開ける前の話なのか、飲み始めてからなのかによって、対応の仕方も違います。お客様がなぜ電話をされたのか、問い合わせをされたのかという背景をよくお聞きするところから始めて、不安を取り除いて差し上げることに全力を尽くしています。

2.消費者の声を企業活動に活かす!

企業活動に活かす仕組み
早見
私たちの声は、企業内にどのように届いているのですか。
長嶺
毎日寄せられるお客様の声は、翌日までに分析・集計されて社内イントラネットで全社員に公開しています。内容も各ブランド・プロモーションといった製品・サービスごとの集計だけでなく、TVCMや環境、自動販売機などテーマごとに分析・整理して公開しています。社内の担当者は、毎日各自の担当分野に関連するお客様のご意見や感想を確認しています。お客様相談室の窓口で「お客様のご意見は担当部署に伝えさせていただきます」とお話ししますが、これは本当なのです。
先ほどの85 %のお問い合わせと15%のご意見、ご指摘の声を、いかに商品や事業に活かしていくかが重要です。商品の設計段階から、お客様の声を定量的にも定性的にも、関連部署の人間が共有できる仕組みがあります。
また、ブランドの担当者から部門長まで自由に意見交換ができる環境や風土が整っているので、お客様の声を活かせていると思います
どのように事業活動に活かしているか
早見
商品開発に活かされた事例はありますか。
長嶺
例えば、弊社のスリムボトル(薄い扁平型のペットボトル)は「500ミリリットルのペットボトルは、カバンに入りにくい」というお客様の声を基にパッケージ部門が開発したものです。
早見
あれは画期的でした。
長嶺
お客様の声の中にたくさんのヒント(消費者ニーズ)があり、その消費者ニーズをいかにスピーディーかつ効果的にビジネスに活かせるかが勝負です。また、消費者とのリアルなコミュニケーションを通じて得られたお客様相談室の知見が開発に活かされたケースもあります。大型ペットボトルの軽量化は、環境に優しくコストも削減できる一石二鳥的な課題ですが、これによって柔らかくなり過ぎて中味がこぼれてしまったら元も子もない。このことはお客様相談室としてもパッケージ部門に対して強く要望していたことです。その結果として軽量化を実現しつつ、消費者にとって使いやすい容器が開発されました。
特保の烏龍茶飲料と麦茶飲料は、350ミリリットルのペットボトルで新発売しました。発売後、「毎食のときに飲みたい」「血圧の関係で、家族みんなで毎日飲みたいから徳用サイズが欲しい」という声にお応えして、大容量サイズを 追加発売しました。
また、ある茶系飲料は竹筒型の形状で、発売時は斬新なボトルとして自信がありましたが、発売してみると「車のドリンクホルダーに入らない」という声をいただきました。商品の設計者は、主要な車のドリンクホルダーを調べて作っています。調べてみると、カー用品店に、標準仕様ではなくてお客様が選ばれるドリンクホルダーがあり、その中にペットボトルが入らないホルダーがあった。お客様の視点で考えて、一回り小さい形状にして出しました。
早見
お客様の声が届いてから、どのくらいの期間で……。
声が届いてから意志決定するまで、数カ月です。
早見
それは早いですね。確実に経営サイドに届いていますね。
長嶺
マネジメントが経営判断を行うためには様々な情報が必要です。お客様の声は、その一つです。ただ、年間8万件のお客様の声をそのままの形で届けるだけではマネジメント判断は難しい。そこで私たちお客様相談室がこれまでの経験とノウハウを持って分析・評価した結果をその代表的なお客様の声と一緒に定期的に直接レポートしています。そのレポートに挿入される代表的なお客様の声を社内では「ホットボイス」と呼んでいます。
携わっている人間すべてが、お客様視点で仕事ができているかどうかですね。私どもの12万件の情報は全員が共有できるようになっていますが、それ以外に週次と月次で、代表的なお客様の声を問題提起も入れてレポートしていま す。当然トップにも届いていますので、常にどんな情報も共有されていますし、R&D部門やマーケティング部門、生産の現場まで共有化できています。お客様の声を起点に、いかに仕事ができているかという環境、風土が大事です。
また、今挙げた部署に対して、私どもが「お客様視点気づき講座」という名前で巡回しています。お客様の声を題材にしながら、お客様視点での行動、意志決定ができることに力を入れています。
早見
企業活動の要のようなポジションになっているのですね。
長嶺
確かにお客様相談室の役割は変化してきたと思います。以前は、製品や広告など最終段階にならないと私たちが関与することができなかった。しかし今は製品や容器開発、プロモーション、広告など早い段階から関わっています。例えばCMでは、法務部門、学術調査部門などがそれぞれの専門分野でチェックをしますが、お客様相談室も消費者の視点でコミュニケーションチェックする。私たちは絵コンテの段階からチェックしています。そこで気になる点は徹底的に担当部門へフィードバックし、ビジネス全体において消費者視点が活かされるよう努力しています。
早見
何かしらの形で、必ず活きているのですね。ところで、最近の消費者の傾向はいかがですか。
低CO2商品など、環境に配慮した商品に対する評価や関心の声が、非常に多くなっています。例えば、「リサイクルのときにラベルがはがれにくい」「こう改良した方がいい」という声は多いです。
早見
はがれにくくて爪が入らないのがありますね。
ラベルのはがしやすさに関する声は、商品設計をするとき、中味や形状と同じぐらい大事な情報として扱います。
長嶺
環境は今のキーワードですね。私どもはプラントボトルといいまして、石油由来だった素材の一部に植物由来の素材を使用したペットボトルを作って市場導入しています。これは普通に自治体のリサイクルに出せます。環境に優しい だけでなく、リサイクルもしやすいものです。
事故防止のための啓発活動
早見
安全・安心のための情報はどこで入手できますか。
長嶺
私どものホームページで、「よくあるご質問」というFAQのほか「コカ・コーラからのお願い」というご案内があります。そこで、例えば開栓・未開栓の判別方法や製品の取り扱いなどお客様にとって有用な情報を積極的に発信しています。また、お客様の声にお応えする形で「ここが変わりました!」というページでは、代表的な改善例を情報発信しています。
私どものホームページの中に「お客様センター」というページがあり、そこに賞味期限や使い方、飲 み方などについて、Q&A方式で掲載しています。また、安心・安全に飲んでいただくことに関する小冊子を作って配布しています。
早見
全清飲でも、『みんな一緒に、おいしく、楽しく!』を作って、イベントなどで配布していますね。
長嶺
この冊子は、第7回消費者教育教材資料表彰の優秀賞を受賞しました。
早見
実際に、教材として使われるのですか。
はい。希望される先生方が教育現場で副教材として活用されると聞いております。
早見
それは素晴らしいですね。

今後の展望

お客様相談室の目指すべき姿とは?
早見
今後の目指すべき姿は、どのようなものですか。
お客様に満足いただける商品とサービスに尽きると思います。そのために、私たちはまず、刻々と変わるお客様の声、お客様の情報をトップや関連部署に共有化できるアンテナの役割をしていく。それから、商品に関わるすべての部署が、お客様視点で行動し意志決定ができるためのサポートをしていく。いかに、その2つの仕事に取り組んでいくかが、今後の課題だと思っています。
長嶺
私たちは、企業の顔としてお客様との良い関係を創出するコミュニケーションセンターを目指しています。もっともっとお客様の身近な存在としてお客様相談室にご意見やご要望をお寄せいただきたいと考えています。
また、社内においては、お客様を最も身近にリアリティーを持って知る部門として、消費者情報のシンクタンクのような存在でありたい。刻々と時代が変わり、消費者のトレンドが変わっていく中でいち早く消費者の期待がどこにあるのかを捉え、あらゆる企業活動を消費者視点を持ってサポートしたいと思っています。
早見
身近な存在に、ですね。
長嶺
たくさん声を寄せてほしいですね。1人の方のご意見が本音をずばりと言い当てていることもあれば、大勢の方のご意見が集まることによって、製品開発の舵取りを大きく変えていくことも、数限りなくあります。
早見
お客様相談室を通して、消費者の満足度がますます高まっていくことを期待しています。

 

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