清涼飲料の文化史
食文化史研究家・西武文理大学客員教授
永山久夫
ひやっこい、ひやっこい[江戸時代の清涼飲料水]
江戸の町は人口過密の大都会であり、夏の暑さはことの他きびしかった。暑さしのぎの手段として、道に打ち水をしたり、すだれによる日よけ、風鈴や団扇もあったが、風がないと風鈴は音も出ない。
じっとしていても汗が出るような暑い日は、のどもかわく。そのような町へ、「冷や水売り」がやってくる。
水色の前かけをかっこよく身につけて「ひやっこい、ひやっこい」と涼やかなよく通る声をあげながら流すのである。
幕末の『守貞漫稿』によれば、「夏の日、清冷の泉から汲んできた冷たい水に、白砂糖と寒ざらし粉(もち米)で作った団子を加え、一碗四文で売る」とあり、求めに応じて八文、十二文のものもあった。売値の差は白砂糖を多く加えるからだとある。
米価をもとに換算すると一文はだいたい十九円くらい。したがって四文は八十円弱だから、そう高くはない。上方では白い団子を加えず一碗が六文であり「砂糖水売り」といった。
江戸の町ではやがて白玉に紅色をつけた団子が出現し、娘たちの間で人気となった。いずれにしても、早く売りきってしまわないと冷水が湯のようになってしまうのが難点であった。
イラスト:中川 学















