FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
「アルコール分0.00%」ノンアルコールビールの変遷と今後の市場予測
「1%未満」から「0.00%」へ
「飲めない」「飲まない」時の新たな需要掘り起こす
昨年4月からついに世界初の「アルコール分0.00%」が登場したノンアルコールビール市場。
9月にはビール四社から製品が出そろい、新たな市場として注目されています。
今回は、ノンアルコールビールの中でも「0.00%」商品の創り出す新しい消費・今後の市場動向について、清飲記者会の室田亮一さんにご執筆いただきました。
運転時、妊産婦、休肝日…新しい消費を作り出した「0.00%」
キリンビールが昨年4月に〈キリンフリー〉を発売し、その後各社が追随する形で構築された「アルコール分0.00%ノンアルコールビール」市場。昨年は消費者の認知を得て、一気に新しい市場を構築した。昨年のアルコール分0.00%市場は、ビールメーカー四社商品合計で460万C/S(1C/S=633 mℓ× 20本換算=12.66ℓ)。市場が急拡大していることを踏まえ、ビール四社以外のメーカーや輸入業者からも新製品が発売され、市場は拡大傾向にある。消費者の「運転するから飲めない」「妊産婦で飲めない」など、アルコールを飲みたいけど飲めないシーンや、休肝日にビール代わりに飲むといった新たな消費を創り出している。
ビール四社に他社も追随市場規模の拡大続く
スーパーでの関心は高く、発売時には大量陳列する店もみられた
ビールメーカー四社が発売する「アルコール分0.00%」のノンアルコールビールは、〈キリンフリー〉以外にアサヒ〈ポイントゼロ〉、サ ッポロ〈スーパークリア〉、サントリー〈ファインゼロ〉の計四商品。このうち、同市場のパイオニアの〈キリンフリー〉が400万C/Sと全体の87%を占め、圧倒的な数量を占める。
〈キリンフリー〉の当初の年間目標は63万C/Sだったが、発売直後からの好調を受けて、目標を1 6 0 万C/Sに修正、さらに350万C/Sに再修正したが、12月上旬には目標を達成、最終的には400万C/Sと「大ヒット商品」となった。ビールメーカー三社は9月中にそれぞれ同様の新製品を発売、11月後半から12月にかけてはビールメーカー以外からの同種商品の発売が続いた。増量缶や先行メーカーを潜る店頭価格など、市場獲得に向けた動きは熾烈をきわめた。 日本サンガリアベバレッジカンパニー(大阪)は11月30日から〈ホップの香り〉を、ドウシシャ(大阪)は韓国のビールメーカーが製造した〈モルトタイム〉を、日本ビールは〈バービカン〉(アルコール分0.1%、原液輸入/国内製造)のアルコール分を0.00%にした新〈バービカン0.000%〉を12月15日から発売した。ビールメーカー、それ以外含め、昨年末には七種が揃う形になった。
ビールメーカー以外の商品は、ビールメーカー社製品よりも基本的に価格が安い。ビールメーカーの商品群が135〜148円、安くても120円台なのに対し、後発のメーカーの商品は「実勢価格は120円前後」(新バービカン)、「ネットで一本当たり100円」(ホップの香り)、「店頭実勢価格は98円程度」(モルトタイム)など価格は安い。これは、ブランド力に勝るビールメーカーの商品に対抗する意味がある。
道交法改正、厳罰化で注目されたノンアルコール飲料市場
振り返ってみると、このノンアルコール飲料市場は、02年の道路交通法改正、04年の飲酒運転のさらなる厳罰化とアルコール飲料にとってアゲインストの風が吹く中で、アルコールメーカーにより、「アルコールの代替え」の需要として提供された。アルコール分1%未満飲料が数多く発売され、スーパーなどの売場でも多くの商品が展開された。飲料メーカーの中からも、コカ・コーラシステムのビール風炭酸飲料〈スカイモルト〉などが発売され、売場を賑わした。
市場は、道路交通法改正、のちの厳罰化により、注目されたものの、「少しではあるが、アルコールが入っている」「そのものを複数杯飲んだ場合、アルコールが検出される可能性もある」「個人差や体調により、酔う場合もある」などの観点から、消費者の要望を満たし切れていなかったこともあり、この「アルコール分0.00%商品」が発売されるまで、徐々に数量を減少させ続けてきた。
「従来のノンアルコールビールとは違う消費を捉えた」と流通関係者がいうように、アルコールでも清涼飲料でもない新たな「アルコールを飲めないシーンの飲用提案」とみることができる。清涼飲料業界にとっても、こうした「アルコールを飲みたいけど飲めない」などへは関心が高まっており、今年以降、徐々にその消費に合わせた提案が進んでいくだろう。
ノンアルコールビールは清涼飲料水
2月に開催されたスーパーマーケットトレードショーでは、卸からノンアルコールビールの展示がなされ、今年も注目されている
ノンアルコールビールは、ビール類と同じ売り場に並べられていることが多いが、じつは清涼飲料水に分類される。厚生労働省(旧厚生省)の定めた食品衛生法によると、清涼飲料水は「乳酸菌飲料、乳および乳製品を除く酒精分1容量パーセント未満を含有する飲料」と定義されており、したがってノンアルコールビールは、清涼飲料水に分類される。
「1%未満」と「0.00%」その大きな違い
では、なぜ「1%未満」のビールテイスト飲料が低迷する中、「0.00%」が伸長できたのか。この要因は「1%未満」でも、わずかながらアルコール分が入っていることにより、消費できない層がいた、ということに他ならない。たとえば、ゴルフ場での飲酒は厳しく取り締まられるが、その取り締まりの対象にも「1%未満」のビールテイスト飲料では引っかかる可能性がある。飲み過ぎればアルコール検知に引っかかるし、個人によっては「酔う」人も出てくる。また、妊産婦はアルコールが微量でも入っていることを嫌うし、妊産婦のアルコール摂取の乳児・胎児への影響は酒類業界でも周知を図っている。
「0.00%」の商品群は、その心配がないといわれていることから、「本当は飲みたい」という需要を掘り起こせたとみることもできるだろう。「ノンアルコールならお茶でもいいではないか」という見方もあるが、やはり見かけや味が「ビール風」という点が飲用者の気分を満たしたことも大きいだろう。
アルコール分0.00%のノンアルコールビールは、飲酒運転防止(運転前の飲用)、妊娠中、産後の飲用、休肝日の代替え品、飲めない人の酒席での飲用など、この商品ならではの特性が消費者に認知されつつあることから、ブーム的な動きではなく、今年も一定の市場規模を維持することはほぼ間違いないだろう。
今年も年初から「0.00%」の市場はリニューアルが相次ぎ、伸長市場下でのパイの取り合い、競合関係が続く。〈キリンフリー〉で先行しているキリンビールは同商品のリニューアルに加え、〈休む日の0.00%〉を4月14日に発売する。グループの協和発酵バイオが独自に研究開発、製造する「回復系アミノ酸・オルニチン」を使用、「〈キリンフリー〉の飲用理由で休肝日が9.8%とまだ10%に満たないことに着目。休肝日向け、休肝日を奨励する」(キリンホールディングス)と「0.00%」の飲用意向による細分化を図り、さらなる需要の掘り起こしを図る考えだ。流通の関心も高い。2月のスーパーマーケットトレードショーに出展した卸業者のブースでは、ビールテイスト飲料の専用コーナーを設置、「ドライバーやダイエット中の人、スポーツ後でも楽しめる」とPRしている。
清涼飲料市場は昨年1.9%減と二年連続マイナスになり、第一次オイルショック、第二次オイルショックと同程度の苦境を迎えている。業界内では、新たな成長の芽を模索し取り組む企業も増えている。従来からあるカテゴリーの狭間を刺激する商品や、新たな容器イノベーション(革新)を行うメーカーと各メーカーが、それぞれの飲料業界の未来像を模索している。
次は何が売れるのか。これがわかれば企業は儲かるが、低迷期にこそ見える、消費者の求める需要、消費形態、用途などがあるはず。「アルコール分0.00%のノンアルコールビール飲料」も一つのイノベーション。「同じ方向性を歩むというわけではなく、ビール業界はビール業界の、飲料業界は飲料業界からのアプローチができるはず」と大手メーカー・マーケティング担当は話す。
飲料業界が見逃している消費がまだ、そこには埋もれているのかも知れない。
(室田 亮一)
















