消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

循環型社会を築くための第一歩は、「ポイ捨て」をなくすことであると考えています。
今回は、㈳食品容器環境美化協会の一員として清涼飲料業界が取り組んでいる、まち美化推進活動について語り合っていただきました。

 

[対談]田中 誠 早見 優
清涼飲料業界のまち美化への取り組み

(写真左から)
田中 誠/(社)食品容器環境美化協会 専務理事
早見 優/聞き手

田中 誠
(たなか まこと)
(社)食品容器環境美化協会専務理事
1949年生まれ。1973年東京大学経済学部卒業。農林水産省四国森林管理局長、福岡商品取引所常務理事、日本中央競馬会常務理事などを歴任し、2009年6月から現職。
早見 優
(はやみ ゆう)
日本生まれ、3歳から7歳までグアム、7歳から14歳までハワイで育つ。 90年上智大学比較文化学部日本文化学科卒業。82年にデビュー以来、歌手・俳優・DJ等幅広い分野で活躍。92年にはブラジルで行われた地球サミットに NGO団体、地球女性連絡会代表として参加。現在もイベント・トークショー多数参加。

 

1.食環協とは?

環境美化の啓発・推進のため、飲料メーカー6団体で設立
早見
新春号では、「清涼飲料業界の環境への取り組み」を伺いました。今回は、「まち美化への取り組み」というテーマですが、(社)食品容器環境美化協会さんと全清飲さんは、どのようなご関係にあるのですか。
田中
私どものところは、略称で「食環協」といいます。全清飲さんは食環協の会員で、たいへんなご支援・ご協力をいただいています。
セルジオ・メンデスの「おいしい水」という曲をご存じですか。「おいしい水」、すなわち「おいしい飲料」を、消費者の方に飲んでいただくことを仕事としているメーカーがたくさんあります。それらのメーカーがいくつかの団体を組織しています。果汁を提供するメーカーの団体である(社)日本果汁協会、コーヒー飲料を提供するメーカーの団体の日本コーヒー飲料協会、トマトや野菜飲料を提供するメーカーの団体の(社)全国トマト工業会、それからコカ・コーラ協会、そして、私などは特にお世話になっているビールのメーカーの団体であるビール酒造組合、それに全清飲さん、これら6つの団体が食環協のメンバーなのです。
早見
なるほど。そういう、ある意味ではお互いに激しい競争をしている方々が、なぜ食環協という組織に結集していらっしゃるのですか。
田中
競合する面もありますけれども、会員の皆さんは、安全でおいしい飲みものを社会に提供することを社会的責任として、日夜努力を重ね、大きな成果を上げていることに自信を持っています。
ただ、誇りを持ちつつ、ちょっとだけ心苦しいことがないわけではないのです。それが、かつての言葉でいえば「空き缶公害」なのです。安全でおいしい飲みものを提供して、みなさんに喜んでいただいているという自負がある一方、空き缶、空きびんなどの、飲み終わった後の商品の散乱が発生し、昭和40年代前半だったと思いますが、「空き缶公害」という言葉まで生まれました。
そこで、企業の社会的責任の観点から、環境美化のためのさまざまな啓発・支援活動を展開するために、関係団体が集まったのです。
早見
飲み終わった後の商品の散乱については、買った方が最後まで責任を持たなければいけないと思うのですが、メーカー側も責任を感じて、こういう団体をつくられたのですね。
田中
それで、少しでも「ポイ捨て防止」「散乱防止」のお役に立ちたいと、1973年に6つの飲料団体が自主的に設立したのが、食環協の前身の「食品容器環境美化協議会」なのです。そして、「観光地合同美化キャンペーン」や、空き缶散乱実態調査を始めました。
食環協の歩み
「ポイ捨て防止」を呼びかけて35年

「統一美化マーク」の変遷

早見
「ポイ捨て防止」というと、自販機などでよく見かける、「のんだあとはリサイクル」という緑のマークがありますね。
田中
「ポイ捨て防止」を呼びかけるために、1981年に採用した「統一美化マーク」です。食環協に結集する飲料メーカーさんが、統一したマークで継続的に「ポイ捨て防止」を呼びかけることによって、PR効果を高めようという狙いです。初めは「あきかんはくずかごに」だったのですが、いくつかの変遷を経て、現在は「のんだあとはリサイクル」になっています。まさに「継続は力なり」で、あの「のんだあとはリサイクル」という緑のマークは、皆さんによく知られたマークになりました。早見さんもご存知とのことで、とてもありがたく思います。
また、組織としてもその翌年には、飲料団体を会員とする㈳食品容器環境美化協会を設立しました。そして、地域に密着した環境美化活動を行うため、全国にある食環協の会員企業の拠点をつなぐ、「地方連絡会議」を設置しました。現在、全国各地で42の地方連絡会議が活動しています。
早見
確かに、町の中で空き缶やペットボトルの散乱は、目立たなくなりました。でも、道路の脇や河川敷など、まだまだ気になるところがありますね。たまに家族で週末、山や川にバーベキューなどをしに行くと、せっかくの気分が台無しになる時もあります。
田中
ちょっとした気遣いで、解決できる問題のはずです。そのちょっとした気遣いがされるように、わたしたちとしても、継続的に情報発信をしていかなければならないと思っています。
早見
母親として、「ごみはちゃんと持って帰ろうね」と家庭で教えているつもりです。子どもの時から、そういう心を大切にしていく必要があると思います。

 

2.食環協の活動内容

まち美化・アダプト・プログラムとは
早見
食環協は、そのほかにどのような活動をされているのですか。
田中
基本的には、安全でおいしい飲料を提供することにともなって発生してしまう、ごみ問題に対処する活動です。容器包装のリサイクルシステムが整備されて、問題への対応の基本的な軸ができたと思っていますが、そのシステムだけでは完結しない部分を、カバーしていきたいと思っています。
その一例ですが、「アダプト・プログラム」※というのはご存じですか。
早見
アメリカで始まった、ハイウェイをボランティアで清掃しようという運動のことですね。
田中
そうです。アメリカで1985年に導入され、日本でスタートしたのは1998年です。アメリカの事例調査や有識者を交えた研究会を行い、「日本版アダプト・プログラム」の具体的な提案をしたのが、食環協です。
アメリカでのスタートはハイウェイが対象でしたが、今、日本では道路のみならず、公園、河川敷など、あらゆる公共的な場所の清掃が、市民の自発的な活動として展開されています。その活動がもっともっと盛んになるように、いろいろなお手伝いをしております。
早見
市民と自治体のパートナーシップによる、新しい「まち美化」の手法ですね。
田中
はい。2009年12月末の時点で、300を超える自治体で、430のプログラムが実施されていて、参加団体は1万9000に上ります。
ほんとうに素晴らしい活動なのですが、参加されている市民の皆さん、実施している自治体、それぞれ悩みを抱えていらっしゃるのです。わたしたちは、少しでもその悩みを減らせるように、そして、素晴らしい活動をいっそう素晴らしく展開できるように、微力ながらお手伝いしております。
早見
どのような方たちが、活動されているのですか。また、どのような悩みを抱えていらっしゃるのですか。
田中
自治体からの報告を集計しますと、昨年度、企業が28%、町内会・自治会が25%で、この2者で過半数となります。このほか、環境団体、サークル、青年会、老人会などが参加しています。小中学校を中心に、学校も全体の中で4%を占めています。
早見
なるほど。そういう方々が、もっともっと増えていくといいですね。
田中
地方自治体や市民団体の方からお話を聞くと、活動をしてみたいという潜在的参加意欲は、かなりたくさんあると感じます。しかし、なかなかきっかけがなくて参加できない、まとまった活動にならないようなのです。企業の参加が多いのは、やはり既存の組織がしっかりあることの結果だと思います。
潜在的参加意欲を具体的な形にしていくこと、きっかけを提供して、皆さんの参加意欲を結晶させていくこと、そのための情報提供をしたり、情報交換の場を提供したりして、さらにアダプト・プログラムが増えるようにしていきたいと思っています。
早見
地方自治体の関心も、高いでしょうね。
田中
清掃活動ではありますが、その意義は、清掃活動にとどまらないものがあると思います。自分たちの町を美しくしようという気持ちは、郷土愛を育むことにつながりますし、人まかせ、行政まかせにしないで、自分たちでとにかく動いてみようという精神は、人々の「公(おおやけ)」の心を育てることにもなります。
社会全般に、公共精神の弱まりが指摘されている中で、まち美化・アダプト・プログラムへの参加は、身近な公共への参加の機会であり、このことは、行政全般への人々の関心を高めていく効果、大きくいえば、民主主義を社会に定着させていく効果もあるのではないかと思われます。
早見
お正月に、アルピニストの野口さんにお会いしました。富士山のゴミ拾いをみんなでされていて、最初は100人ほどしか集まらなかったのですが、今では1000人も参加している。日本を象徴する、みんなが知っている富士山から清掃してきれいにしていけば、もっともっと全国に広がるのではないかと話されていたのです。
自分の住んでいる地域をきれいにすることは、地域に対する愛情も深くなるのではないでしょうか。

※アダプト・プログラム:アダプト(Adopt)は、英語で「養子縁組をする」という意味。アダプト・プログラムとは、一定区画の道路や公園、駅前通りといった公共スペースを養子に見立て、地元の市民や企業・団体が里親となって清掃美化を行い、行政がそれを支援するというものです。

 

「まち美化・アダプト・プログラム」清掃活動

アダプト・プログラム・シンポジウム

アダプト・プログラムの標識(サインボード)例

 

環境教育の支援
早見
その「まち美化」を一過性のイベントで終わらせずに、長期的な視点で進めて行くためには、これからの社会を担う子どもたちへの教育も大切ですね。
田中
おっしゃるとおりです。食環協では、事業の大きな柱として、環境教育の支援活動も実施しています。「総合的な学習の時間」の中心テーマのひとつである「環境学習」を支援するため、いち早く2000年度から、小中学校の先生に学習教材を提供したり、ホームページに環境学習支援サイトを開設しています。
さらに、学校での環境美化教育を応援していくため、1989年から、環境美化の教育と実践に熱心に取り組んでいる、全国の小中学校を表彰しています。対象は、「公共的場所の清掃美化」または「空き飲料容器のリサイクル」を実践し、地域の環境美化の啓発に大きく寄与している、小中学校やそれに準ずる団体です。
早見
地球温暖化、生物多様性の維持、持続可能な社会など、環境をめぐる問題も複雑で、むずかしくなってきました。学校の先生も、子どもたちに教えなければならないことが多くて大変でしょうね。
田中
環境問題に取り組む前提として、子どもの時代には、具体的な体験、実際の経験による実感を培っていくことが大切だといわれています。
たとえば、山に行って山のよさを知る、海に行って海のよさを知る。また、きれいだったところが汚くなってしまった無念さを知るなど、実感が大切です。町に出て、自然やごみと接触し、地域の人とも接触して、地域の人に感謝されたり、お礼を言われてお菓子をもらったり…。そういう経験が大切だと思います。
早見
まさに「原体験」ですね。これは、アダプト・プログラムの学校版になるのでしょうか。
田中
大きな意味で目的を同じくするものです。最近の表彰では、町の中心となる公園の清掃活動、清掃登山、町の玄関口に当たる国道の清掃、地域を巻き込んだごみ分別回収運動、ペットボトルの独自のやり方での再利用、などの活動が表彰されました。表彰を受ける児童生徒の誇らしい顔を見ていますと、彼らが大人になった時、きっと立派な大人になるに違いないという気がします。
早見
まち美化・アダプト・プログラムは、単に清掃活動にとどまらないといわれていましたが、小中学校での活動も、そういうことがいえるでしょうね。
田中
そうですね。彼らの誇らしい顔は、表彰されたというだけでなく、自分たちの活動が地域づくりになっている、地元の人たちからも評価されているという自信の現われであるとも感じられます。当然、活動を通じて郷土愛も育まれています。小学生、中学生が頼もしい存在と感じられます。
早見
全国の小中学校でこの活動が繰り広げられているのは、素晴らしいことですね。
田中
まち美化・アダプト・プログラムも環境教育の支援も、単に清掃活動にとどまらない大きな意義があり、活動がまだまだ広がっていく勢いであることを大変うれしく思っています。
飲料メーカーが、そういう活動を支援しているということも、全国のみなさんに広く知っていただき、応援していただければと思っています。

小中学校の先生向け「環境学習ガイド」

 

洞爺湖サミットを「まち美化活動」で支援
早見
さまざまな支援活動をされているのですね。食環協の活動に、直接飲料メーカーさんが参加して、活動を実施される場合などは、ありますか。
田中
たとえば、2年ほど前になりますが、洞爺湖サミットの時、「まち美化活動」を展開いたしました。
早見
どのような内容だったのですか。
田中
洞爺湖サミットの開催を控えた時期に、よりよい環境で来道者を迎えるために、北海道庁が「おもてなしクリーンアップ運動」を展開しました。このキャンペーンは私たちの活動と接点が多いことから、両者協働し、相乗効果を上げるため、「おもてなしクリーンアップデー」を共同開催しました。
当日は、会員企業16社、450名が参加し、統一美化マークのゼッケンを着けて、札幌市の大通公園をメイン会場として、周辺の広範囲のごみ拾いを行い、ポイ捨て防止の啓発グッズを配りました。
早見
多くの方が参加された、素晴らしい活動ですね。これからもぜひ、続けてください。

新環境美化教育優良校等の表彰

洞爺湖サミットの時の「おもてなしクリーンアップデー」の活動

 

3.今後の展望

「まち美化」と食環協のこれから
早見
今後、「まち美化」はどのような方向に進んでいくと思われますか。
田中
先ほど申し上げたように、「まち美化」の活動は、直接の目的である「まち美化」の意義にとどまらない、幅の広い社会的意義がある活動なので、これからますます各方面でその意義が評価され、全国に広がっていくと思っています。
早見
食環協としての、今後の展望をお聞かせください。
田中
「散乱防止の啓発」、「アダプト・プログラムの推進」、「環境教育の支援」、この3つの柱を通じて、今後も、環境美化のための啓発・支援活動を積極的に展開していきます。
早見
サミットもそうですが、さまざまなイベントなどと協働することで、さらに活動の場を広げ、飲料メーカーの素晴らしい活動を多くの人に知っていただき、応援していただけるといいですね。
本日は、ありがとうございました。

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