FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
2010年の飲料マーケットを読む
幕を開けた新時代 閉塞感打破し這い上がれ!!
不況と冷夏の二重苦に需要が阻まれ苦戦した昨年の飲料市場。
生き残りをかけ業界は大きく動き始めています。
今回は清飲記者会の金井順一さんに09年の飲料市場動向と、10年の展望についてご執筆いただきました。
成長戦略で各社、生き残りをかける
一昨年秋のリーマン・ショック以降、飲料業界には節約志向が重くのしかかり、昨年は閉塞感漂う一年だった。急速な景気悪化は業界に容赦なく襲いかかり、加えてこれに冷夏が追い討ちをかけた結果、昨年の飲料生産量は前年比3〜4%減で推移。前年に引き続き連続マイナス成長で着地した模様だ。
2年連続マイナスは第1次オイルショック、第2次オイルショックに続く戦後3度目と言われ、金額の落ち込み幅は近年では記録的。不況と冷夏の二重苦に 需要が阻まれ、大きな打撃を受けた。飲料業界は「景気」と「天気」と「元気」で決まると言われてきたが、昨年は「景気」と「天気」に見放され、持ち前の 「元気」も奪われてしまった。
最悪の環境の中で打つ手すべてが不発だっただけに、「今年こそは」の期待感はことのほか大きい。生き残りをかけた成長戦略は、今後発表されるマーケティング戦略等で具体化される。また、究極の業界再編として発表されたキリンとサントリーの統合を契機に、M&Aの動きが加速することも確実で、業界の進路を占う意味でも大いに注目される。まさに新時代の幕開けだ。
高付加価値型商品で不況打破
「不況感漂う中で消費者に生活防衛意識が高まり、飲料需要への影響は必至」「不況の影響が消費者心理にマイナスに働くことは間違いない」「今期の販売見通しとして、横ばいから1〜2%のマイナスは避けられない」「生き残りをかけた企業間競争は一層激しさを増し、勝ち組、負け組の差が浮き彫りになる」。1年前のこの項で、09年の業界予測をこう指摘したが、これらはすべて現実問題として表面化した。
品目別では、炭酸飲料を除いてあらゆるカテゴリーが軒並み不振。一昨年まで飲料全体の伸びを支えてきたミネラルウォーターも、生活防衛意識の高まり等で輸入品を中心に急ブレーキがかかり、緑茶など茶系飲料も長いトンネルから抜け出せなかった。コーラ飲料や透明炭酸に浸透したゼロ系飲料の頑張りで、冷夏ながら炭酸飲料が好調だったが、これも全需要を押し上げるまでには至らなかった。
こうした中で容器の原材料(樹脂)使用量を削減することで国内最軽量をアピールするなど環境を重視したことにより、業界内で唯一ヒットを飛ばした国内大手の国産ミネラルウォーター。水道の浄水器や水筒によるマイボトルの普及など、生活防衛意識の高まりによる逆風の中で需要を捉え、付加価値勝負の時代に「環境」を前面に訴えたことがヒットの引き金になった。
食品、飲料業界には「千三つ」という諺がある。これは新製品を千個発売してもヒットするのはせいぜい3個。それほど新製品でヒットを飛ばすのは難しいというたとえだ。だが最近は、ヒット商品は3個にも満たない有様で、ここ数年、新製品不作の年が続いている。
なぜそこまでヒット商品が生まれなくなったのか。大手飲料メーカーのマーケティング担当者は「店頭に並ぶ商品に驚きがなく、必要性のない商品が増えたため」と分析する。サプライズや必然性が伴わない限り消費者は手にとってくれない。今やテレビCMやパッケージ、ネーミングだけでは売れなくなった。刺 激が慢性化したため、多少の刺激では目を向けなくなったためだ。こうした中で付加価値を環境に求めたミネラルウォーターのヒットは、付加価値がより多様化していることを裏付けた。
自販機ビジネスの再構築を
現在の飲料自販機の普及台数は約223万台、その売上規模は2兆1500億円強といわれ、飲料にとって自販機チャネルは切っても切り離せないチャネル。その自販機を昨年は不況が容赦なく襲った。
工場や事業所、工事現場等に設置されている自販機は、操業短縮や建設の着工率減少など不況の影響をモロに受けた。ヒット商品不在により自販機パーマシンはジリ貧傾向が続く中で、こうした厳しい状況をあざ笑うかのように100円自販機が横行。自販機ビジネスが軒並み不振だった。
だが、こうした動きが呼び水となり、昨年から自販機ビジネスの見直しが進んでいる。オペレーション機能を担当する新会社を設立し、メーカー機能に徹する部門と役割分担を明確化し、自販機ビジネスモデルを再構築した企業。自販機メンテナンス部門と購買部門の一部を新会社に移管し、環境変化に柔軟に対応できる体制を敷いた企業。更には新たにオペレーター会社に資本参加することで自販機チャネルの強化につなげる企業など、昨年は様々なケースが打ちだされた。今年も自販機チャネルの強化が生き残りの決め手になることは確実だ。
キリン、サントリー統合 新たなM&Aの引き金に
キリンホールディングスとサントリーホールディングスが経営統合交渉に入ったというニュースは、飲料業界にも瞬く間に拡がり、業界が新時代に突入した ことを印象づけた。実現すれば業界の勢力図は大きく塗り変わるのは確実で、これを引き金に新たなグループ化構想が動き出す可能性も出てきた。
需要減少を背景として事業再編や業界再編は必然的な動きで、そのためにもM&Aは不可欠とみられてきたが、歴史や企業カラー、事業規模など全く異なる会社同士が手を組むことが現実のものとなり、時代を象徴した動きとして大いに注目される。
経営難に陥ったことによる「救済型M&A」ではなく、実現すれば勝ち組同士の統合となり、M&Aも新しい形の幕開けとなる。持株会社の統合後に事業会社を再編するケースが妥当とみられるが、事は簡単ではない。というのも資本統合は株主次第だが、事業別の統合は、両社とも消費者との接点であるブランドを抱えているだけに一筋縄では収まらない。
ブランドの中で何が消え、何が残るのか。似通った飲料ポートフォリオの中でブランドをどう再編成するのか。流通との取引条件はどう変わるのか。工場再編はどう進めるのかなど様々な疑問が浮かび、最終的には「統合するメリットは何か」に辿り着く。
今回の統合が目指すものは人口減少の国内市場より、海外事業の拡大とも言われている。世界各国でグローバルに事業展開している欧米企業に比べると、日本企業の海外戦略は大きな遅れをとっており、海外のM&Aは不可欠とされてきた。今回の統合は酒類や飲料などによる総合飲料グループを目指したもので、両社は国際化も目的のひとつと捉えている。いずれにしても数年先を見据えた統合とみることができる。
これを契機に業界再編が加速することは確実で、既にその兆候は出てきた。ミネラルウォーターを中心に飲料ビジネスを展開してきた企業が、グループ統合により組織を再編成するケースや、資本・業務提携により協働シナジーを追求する企業など多彩なケースが動き出した。製造、調達や物流シナジーもこれから本番を迎える。
提携とは相手の経営的な独立性を保ちながら、特定の分野で協力関係を結ぶことで、狭義のM&A(企業合併、買収)と同じ。共同で事業を展開するのが一 般的で、資本提携や技術提携、業務提携、販売提携、生産提携(生産委託、OEM供給)などがある。
また、目的によって救済型M&A、投資型M&A、事業拡大に伴う積極型・多角型M&Aなどにも大別される。不況を反映し、これまで企業が事業の一部を 脱却するため経営効率、リストラ、業績不振、後継者難などが目的だったケースが多かったが、今後は事業拡大に伴う積極型M&Aや多角型M&Aが主流になることは確実で、キリン、サントリーの統合を契機にM&Aの形も大きく変貌しそうだ。
2010年の飲料商戦が開幕し激動の年を迎えた。今年は昨年以上の厳しい環境が予想されるが、これまで飲料市場の成長を支えてきたのはメーカーによる旺盛な「開発力」にほかならなく、今年も積極的な開発投資により2年連続マイナスからの回復が期待される。ヒットを確信したカテゴリーに独自性を加えながら新製品で参画し、これが市場を形成。やがてこれがブームを生み、ブームの連鎖が拡大成長につながるはずだ。
(金井順一)
●その他の茶系飲料は、「麦茶飲料」「ブレンド茶飲料」「その他茶系飲料」の合計。●2008年からスポーツドリンクと機能性ニアウォーター(その他(表記以外)の一部)を統一。スポーツ・機能性飲料の2002年までの生産量は、スポーツドリンクのみの数値。また、その他(表記以外)の2003~2007年までの生産量は、機能性ニアウォーターを含む。その他(表記以外)の内訳掲載は2003年から開始。2003~2007年までの機能性ニアウォーターの生産量は表の通り。













