消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

REPORT-12/中村まりの企業探訪
キンキサイン株式会社 本社第二工場

「気分はいつでもFit&Tasty」味にこだわり、地域と連携し 新しい飲料づくりを提案したい

サイダー、缶コーヒー、ミルクセーキなど、変化する消費者の嗜好に合わせさまざまな商品を展開してきたキンキサイン(株)。
 今回は、創業以来貫かれてきたおいしさへのこだわりや、地域と連携した商品開発・社会活動についてうかがいました。

本社第一工場・第二工場では香料を嫌うお茶系飲料を中心に製造しています。
第二工場では2本の小型ペットボトルラインをもち、280ミリリットル〜1リットルの飲料を製造することができます


びんコーヒー製造技術を活かし いち早く缶コーヒーを発売

創業当時に販売していたサインコーヒーとサインミルクセーキ

今回訪問するのは、世界遺産・姫路城を有する実り豊かな播州平野、その中央を流れる市川の清流で、30余年にわたり飲料を作り続けてきたキンキサイン株式会社さん(以下キンキサイン)です。
 創業は1970年。姫路を代表する飲料会社15社が合併し、前身となる近畿サインボトリング協業組合というものが発足したのがその始まりです。当時は、サイダー、オレンジジュース、ミルクセーキなどさまざまな種類のびん飲料を作っていましたが、中でも、びんコーヒーに関しては優れた製造技術をもっていました。
 びんコーヒーとはコーヒー牛乳ではなく、コーヒーをびん詰めし打栓したものです。ミルクの分離や成分の変色を防いだり、味を落とさず殺菌したりするための試行錯誤を、キンキサインは缶コーヒーが誕生する以前から積み重ねてきました。そして、その製造技術を活かし、1972年、缶コーヒーと缶入りミルクセーキの販売を開始します。
 「缶にはすぐに移行することができました。なぜなら、びんより缶のほうが扱いが楽だからです。缶は割れないし中味が見えませんからね」(山口義弘社長)
 76年には近畿サインボトリング協業組合から製造販売を引き継ぎ、現在のキンキサイン株式会社を設立。山口義弘社長が先代から会社を引き継いだ86年には、日本初の350ミリリットル缶コーヒー「デカカンコーヒー」を発売しました。これが大ヒットとなり、会社は一気に成長。「今のキンキサインの基礎ができた」のだそうです。

基本はFit&Tasty おいしさにこだわりぬく

社長みずからラベルを手貼りしたエピソードや、歴代の面白商品、ちょっと変わったキャンペーンなど楽しいお話をたくさん聞かせていただきました

キンキサインでは商品の味に並々ならぬこだわりをもっています。おいしさにこだわりぬいた商品づくりについてお話をうかがいました。
 「商品づくりの基本理念はFit & Tasty です。お客様が好むものは時代によって変わりますが、常にそれにあったもの、そしておいしいものを提供したいと考えています」
 時代の流行や人々の嗜好の変化を素早くキャッチし、それを商品開発につなげられるよう、研究スタッフは常にアンテナを張り巡らせています。今では珍しくなくなりましたが、70年代後半にはすでに100%つぶ入りぶどうジュースを発売していたのだそうです。ゼリー飲料に注目したのも早く、工場にはペットボトルにゼリーを充填する設備などもあるのだとか。
 おいしいものを作るためには、社長みずから現場に足を運び、納得がいくまで原料や製法を吟味します。「自分で飲んでおいしくないものは作りたくない」と社長は言います。そのためには採算度外視になってしまうこともあるそうです。
 「高くてもそれだけの価値があるものを作りたいと思っています。ただし、おいしいかおいしくないかと、売れるか売れないかは別問題。値段だけの価値があるかどうか、何かプラスアルファが必要なんです」
 おいしいだけではない何か。もしかしたら時代や人々のニーズのなかに、そのヒントが隠されているのかもしれませんね。

安全・安心は検証の積み重ね おいしさのための品質管理

おいしさにこだわりぬいた一本です。心して飲まなければ!

工場では、安全・安心で安定した品質の製品を作るため、徹底した品質管理を行っています。味、香り、比重、酸度、ph、色調、透明度、濃さなどあらゆる数値で分析を繰り返します。
 「HACCPの規格に沿った形で、一つひとつ重箱の隅をつつくように確認・検証していますありえないことを想定し、それが確かにありえなかったということを検証していくのです。すべてに関してこの検証の積み重ねですね。安全・安心はその上に成り立っているのです」
 おいしい製品を作るため、本社第二工場ではお茶系飲料を中心に製造し、フレーバー飲料は別工場で生産することで、互いに影響しあうことがないようになっていることもキンキサインの特徴です。
 「フレーバーが干渉しないようにするためには、次の飲料を作る前に12時間くらい間をあけないといけないこともあります。だから、場合によってはわざわざ自社ブランドの製品を外部のパッカーに頼むということもあるんですよ」
 生産効率は落ちますが、そういったことにまで気を使いながら品質管理を行うことで、おいしさにこだわりぬいた製品ができあがるわけですね。

水や環境への配慮に注力 茶かす100%の肥料を開発

キンキサインは水や環境に対する取り組みにも力を入れています。本社第二工場では、越知川、市川という二本の川から水を引いていますが、それはひとつの井戸に負担がかからないようにするための配慮なのだそうです。どちらの川を流れるのも中国山地の森に育まれた美しい水。工場排水や廃棄物の処理にはとても力を注いでいます。
 工場ではお茶系飲料を中心に製造しているため、浄化前の廃水にはたくさんの茶渋が含まれていますが、茶渋を特殊な方法で処理し、さらに最終汚泥を膜ろ過することで廃水をできるだけきれいな状態にしています。このシステムは県からも高く評価され、モデル工場に指定したいというオファーもきているそうですよ。すごいですね。
 廃棄物に関しては、茶かすを肥料や段ボールの原料としてリサイクルしています。
 「100%茶かすだけで年間約600トンの肥料を作っています。家畜ふんを混ぜないのでほとんどにおいがしません」
 現在、どんな農産物にどのように使うのが効果的か、周囲の農家の方々の協力を得て調査中なのだそうです。具体的な効果がわかってくれば、より多くの茶かすをリサイクルすることができるでしょう。今後は、飼料としても活用できないか研究をしていくそうです。将来的には工場から出る茶かすをすべて無駄なくリサイクルできるようになるかもしれませんね。

副工場長の上野哲男さんに工場内を案内してもらいました。ラインにはきれいな煎茶色をしたボトルが並びます。工場内はほとんどにおいがありません

いくつもあるサンプルからひとつひとつ注射器で内容液を取り出し比重を計ります

こちらは微生物検査です。作業はエアカーテンで遮断されたボックス内で慎重に行われます

厚生労働省から認証を受けた総合衛生管理製造過程。HACCP の考え方を取り入れた制度で、安全性だけでなく品質の高さや安定性まで含んでいる厳しい認証制度です

リターナブルラインを再開 地域の企業として地域のために

地域活性化のためにと作り始めた地サイダーや地ドリンクの数々。今後も増えていきそうです

「儲かる仕事ばかりではなく、儲けは少なくても意味のある仕事もやったほうがいい。ライバルも少ないし、結果的にお互いが生き残っていけるから」と語る山口社長

キンキサインは地元では「学校行事や市民イベントを応援してくれる企業」として知られています。その理由は「がんばれ播磨っ子キャンペーン」。保育園から小学校までの学校行事に1ケース1000円で商品を提供するという活動を長年続けているのだそうです。
 「地域の企業として、地域に少しでも役に立てればと思っています。小さいころからキンキサインの味に親しんでいただければうれしいですしね」
 地域の名産品を使ったすだち飲料やオレンジジュースなど、地産地消型の商品づくりにも積極的に取り組んでいます。
 「2〜3年前から、今まで続けてきた大量生産・全国展開という販売方法を考え直してみることにしました。全国に多くのものを売るためには、時として味より安さに重点をおいた開発をせざるを得ないこともある。それはいやなんです。そこで、高くてもおいしいものを、地域ごとに作って販売していくほうがよいのではないかと考えるようになりました」
 その結果、キンキサインでは昨年4月から自社ブランドの数を絞り、一つひとつ今まで以上に手間や時間をじっくりかけた製品づくりをしています。
 リターナブルびん飲料の製造を再開したことも、地域活性化の一助になっています。
 「一時中止していたリターナブルびん飲料の製造を2002年2月から再開しました。大手メーカーから受注が入ったのがきっかけなのですが、これを機会に続けていこうと。地域ごとに地サイダーや地ドリンクといったものを盛り上げていく手助けになればと思っています」
 今年4月には、創業当時に作っていた「サインサイダー」のレシピを再現した「姫路城サイダー」を発売。全国各地の地サイダーブームの追い風もあり、観光イベントや物産館などは大いににぎわったそうです。
 「昔をご存じの方からは“ひさしぶりやな”という声をいただき本当にうれしい思いでいます。今後もリターナブルラインを活かして、こうしたサイダーを出していければと思います」
 地域のための活動で、山口社長には忘れられない思い出があるそうです。それは1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災でのこと。暖房が使えない避難所の人々のため「ペットボトル湯たんぽ」を提供することになったのです。
 「容器メーカーさんに耐熱ペットボトル容器を提供してもらい、コーヒー抽出用の熱水を作る設備で作ったお湯を3トンタンクに入れて神戸まで運びました。そして、現地のボランティアの方々と一緒にペットボトルにお湯を入れて配ったのです」
 そのときの人々のほっとした表情が今でも忘れられないと山口社長は言います。
 「寒かったのでしょう、湯たんぽを手にしたみなさんには本当に喜んでいただけました。その翌年の4月から小型ペットボトルが解禁になり、新規事業として取り組んだペット事業がとても順調にいったのですが、もしかしたらなにか縁があったのかもしれませんね」
 こうしたさまざまな地域への貢献が認められ、2008年11月、山口社長は秋の褒章で黄綬褒章を受章しています。

今まで不可能だった新しい飲料を作ってみたい

最後に、これからどのような商品を開発していきたいか、また今後は環境や地域へどのような取り組みをしていきたいかについてうかがいました。
 「20年に一度は新しい飲料容器が出てくると思っています。びん、缶、ペットボトルに続く次の新しい容器が、そろそろ出てくるころではないでしょうか。新しい製造技術も生まれるでしょう。そのとき、今までは製造が不可能だと思われていた新しい飲料を作ってみたいですね」
 環境負荷の軽減や地域活性化のための活動にも、今まで以上に力を入れて取り組んでいくそうです。
 「廃棄物に関しては100%再生を目標にしています。今、全国の牧場で使われているわらは輸入に頼っているのですが、茶かすを使ってそのわらの代用品を作れないか研究中です。その加工に必要な熱も、工場で製品の殺菌に使う温水の熱を利用するなど、省エネルギーを徹底していければと思っています」
 廃棄物も熱も、一切無駄のないリサイクルをめざすことで、播磨平野の美しい里山や豊かな清流、そして地元の人々の暮らしを守ることができるというわけですね。
 来年で創業40周年を迎えるキンキサインさん。これからも地元に愛され、おいしく新しい時代の味を作り続けてください。

神崎郡神崎町と多可郡加美町の境に位置する播磨十水のひとつ、松か井の水と同じ水源からも原料水を引いています

品質保証本部 本部長
木村俊廣さん
“不良品を作らない、不良品は社外に出さない”を全社の目標にし、各工場努力しております。品質保証部は製造部門とは別組織になっており、製造各グループに担当者を1名常時付けています。製品の検査以外に製造工程を定期巡回し製造部門と違う目で管理しています。品質保証の手段として、第一工場で作成したHACCP の下地を基に、平成16 年に第二工場、翌17 年には徳島工場が総合衛生管理製造過程の認定を受けました。それを維持管理することにより安心できる製品を保証しています。

キンキサイン株式会社
所在地:兵庫県姫路市香寺町犬飼527-1
創 業:1970年(昭和45年)5月

キンキサイン株式会社 本社第二工場
所在地:兵庫県神崎郡河町福本767-18
創 業:2003年(平成15年)3月


探訪後記

姫路駅から車で小一時間。連なる山なみ、きらめく清流からほど近い場所に工場はありました。こんなきれいな場所で作られる飲料はさぞかしおいしいんだろうなというのが第一印象でした。「おいしいものを作るためには妥協を許さない」と熱く語る社長。お土産にいただいた「さわやかすだち」を口にした瞬間、そんな社長の思いが伝わってくるような気がしました。

中村まり

中村まり 「めざましテレビ」など情報番組のリポーターや各種企業のCM キャラクターを務める。持ち前の好奇心と行動力を活かし、現在TV・ラジオなどのリポーター、キャスターとして活躍中。


(撮影/コサイワジュン)

 

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