FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
果実・野菜飲料の変遷と今後の市場予測
健康と自然志向に支えられた果実・野菜飲料

1951年に本格的に商品化されて以来、高度経済成長期の波に乗って市場を拡大してきた果実飲料。
一方、1933年には国産化され、近年では消費者の健康・自然志向を背景に急成長を遂げた野菜飲料。
今回は、果実・野菜飲料の歴史や今後の市場動向について、清飲記者会の菊池美智世さんにご執筆いただきました。
※清飲記者会は清涼飲料の業界紙11社で構成される記者会です
果実・野菜飲料市場の推移
果実飲料は、果汁100%のジュースと果汁10〜50%の低果汁飲料が生産量の多くを占めている。低果汁飲料は、子どもからお年寄りまで幅広い消費者を取り込み、100%ジュースは、健康・自然志向を背景に消費者の果実飲料に対する認識を高めて、市場を活性化してきた。その結果、果実飲料は炭酸飲料とともに戦後の清涼飲料業界を牽引するカテゴリーとなった。
昨今は、消費者の甘さ離れなどの影響から無糖茶飲料に押され、1990年のピーク時に比べて生産量は減少している。核家族化・少子化が進んでおり、今後も市場は楽観できない状況だが、消費者からの根強いニーズがある1リットル紙容器を中心としながら、小容量の商品で幅広いターゲットを掘り起こすことができれば、存在感はまだまだ発揮できる。
一方、野菜飲料は、トマトジュース、トマトミックスジュース、野菜・果汁ミックスジュース、野菜汁のみの野菜ジュースに大きく分けられる。1990年代半ばからは、にんじんジュースや果実とミックスしたジュースが登場し、市場を一気に拡大した。
厚生労働省が推奨する、国民1人1日あたりの野菜摂取量は350g だが、国民の平均摂取量は290gにとどまっており(2007年調査)、消費者の野菜不足に対する意識は高まっている。消費者の中国産原料への不安が高まり、2008年は買い控えが起きたが、野菜の持つ栄養や健康機能の価値が伝われば、再び市場の活性化が期待できる。
果実飲料の歴史・背景
果実飲料の歴史は古く、明治から昭和初期まで「みかん水」として生産・消費された。本格的に商品化されたのは1951年以降のことだ。当初は、果汁不足から果汁を用いない飲料や、果汁分の少ないものがほとんどだったが、所得の増加にともなう生活水準の向上とともに100%ジュースなどへの人気が高まり、より高品質な果実飲料の需要が急増して市場を拡大していった。
さらに、「つぶつぶ」と称された果粒入り飲料や「はちみつレモン」など、消費者ニーズに応えたヒット商品も生まれて成長を続け、生産量のピークとなる1990年には、261万キロリットル(ストレート換算)を記録した。
原料面では、市場が拡大して原料の供給不足が続いたことから、国産果汁保護のため制限されていた、果汁の輸入枠が年々拡大した。1990年には非かんきつ果汁が自由化され、焦点となっていたオレンジ果汁も1992年に完全自由化となり、価格の値ごろ感も手伝って、100%ジュースを中心に消費が大きく伸びていった。
野菜飲料の歴史・背景
野菜飲料の中で、トマトジュースは甘みのない100%ジュースの代表的な飲料であり、1933年から国産化され、1950年に缶詰製品が発売された。その後、新規企業の参入や消費者の天然志向に支えられて急成長を遂げ、1978年には14万キロリットルを記録した。その後も、リコピンなどの健康効果が注目され、一定の支持を集めている。
1990年代に入ると、野菜・果汁ジュースが登場し、需要を拡大していった。当初はにんじんジュースが主体であったが、果汁をブレンドすることで飲みやすく仕上げていることや、緑黄色野菜などの健康価値が注目され、野菜不足解消に対するニーズに応える形で支持を集めた。
2004年には、国の定める1日の野菜摂取目安量を含有するコンセプトの野菜ジュースがヒットし、さらに市場に勢いをつけた。
果実飲料の最近の動向
果実飲料は、ここ数年、天候の影響などから原料の高騰が市場を直撃した。新興国の需要が高まったことも、国際市場の原料高を引き起こしている。世界の需給バランスが崩れつつある現在、原材料の安定的な調達の重要性が増している。
原材料の高騰を受けて、チルドの100%ジュース1リットル紙容器は、2007年に価格改定が行われて苦戦したが、2009年に入ってからは、原材料価格の落ち着きを背景に売り場で活気を取り戻し始め、消費の下げ止まりの傾向が見え始めた。
100%ジュースの小型紙パック容器・PET容器は、消費のパーソナル化を背景に伸長傾向にあったが、2007年をピークに微減傾向となっている。同カテゴリーの魅力のひとつに健康感があるが、小容量の商品では「おいしさ」や「限定」、「新商品」といった「嗜好・気分」を求める消費者が多くなっていることが特徴だ。
低果汁の商品は、各社の大型ブランドが多い。最近では、子どもを中心に若年層をターゲットにしたキャラクター訴求の取り組みにとどまらず、大人向けのリフレッシュ感を訴求するものや、果実を食べているような食感が楽しめるものなどが人気となっている。
野菜飲料の最近の動向
野菜飲料は伸長を続けてきたカテゴリーだったが、2008年は苦戦した。消費者の中国産原料の敬遠といった要因や、原材料高騰による一部メーカーの価格改定もあって、買い控えが起こったためである。メーカーの商品開発の活発化により、飲みやすい野菜・果汁飲料の発売で市場は大きくなったものの、ユーザーの幅が広がった分、ライトユーザーが流出したもようだ。
各社は、基盤商品の育成を続けながらも、ユーザーを取り戻すために、カテゴリーの常識にとらわれない新提案を積極的に行っている。炭酸とミックスしたものや、ゴクゴク飲めるという価値、またはナチュラルな水分補給という点を訴求する商品も登場している。
顧客が多様化していることから、清涼飲料、もしくは健康飲料の中で、消費者に選択してもらえる取り組みがスタートした格好だ。また、女性ユーザーが増えていることから、容器、マーケティングで女性をターゲットにした斬新な提案も行われている。
既存製品では、野菜感のある野菜100%飲料が再度注目を集めており、根強いファンが数多くいることをうかがわせている。品質面へのこだわりは、大手各社とも事業の根幹として最も注力しており、国産野菜・果汁100%の商品を投入するメーカーも2008年から出てきている。
今後の果実・野菜飲料市場の展望
果実・野菜飲料は、両カテゴリーとも、不況の影響から買い控えが起きており、2009年の市場は減少する見通しだ。しかし、消費者の健康・自然志向から伸長を続けてきた市場であり、時代は変わってもその価値は存続するとみられる。原材料や健康機能にこだわった商品が一定の支持を集めることは間違いなく、その意味では産地指定や栄養成分を付加した商品がコアユーザーをつかみそうだ。
しかし、さらなる市場拡大に向けては、商品の中身に着目した健康価値、素材の高さを訴求する従来の取り組みから抜け出すことも必要かもしれない。新たな価値である、リフレッシュ感や食感の提案などの試みを大胆に行い、既存ユーザーだけでなく、他のカテゴリーから新規ユーザー獲得に向けた動きが進んでいる。
果実や野菜の従来から知られている価値を軸足にしながら、領域をどうやって広げていくか。小売店の売り場の棚では現在、定番商品が中心のラインアップとなっているが、驚きを持って消費者に受け入れられる新基軸のヒット商品が誕生することこそが、市場活性化の最大のポイントだ。
(菊池美智世)

















