消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

消費電力量削減を目的とした「自主行動計画」への取り組み
座談会

(写真左から)
西脇 誠之/(株)ジャパンビバレッジ
上池 淳介/サントリーフーズ(株)
早見 優/聞き手
井出 好明/パナソニック フードアプライアンス(株)

 

新政権を担う民主党が温室効果ガス25%削減を掲げるなど、温暖化対策への取り組みは世界的な潮流になっています。
 清涼飲料自販機は、早くから省エネ化を実現してきましたが、今号では、さらなる消費電力量削減に向けた新しい取り組みについて、語り合っていただきました。

西脇 誠之
(にしわき まさゆき)
1961年 東京生まれ。84年 (株)ジャパンビバレッジ入社。97年 八王子営業所長、04年 購買部部長、07年 販売促進部部長、09年 首都圏事業本部、首都圏第三事業部長。
上池 淳介
(かみいけ じゅんすけ)
1954年 大阪生まれ。77年 サントリーフーズ(株)入社。京都・広島・九州の営業拠点を経る。99年 物流部 部長、00年 ロジスティクス推進部 部長、04年 機材部 部長。
早見 優
(はやみ ゆう)
日本生まれ、3歳から7歳までグアム、7歳から14歳までハワイで育つ。 90年上智大学比較文化学部日本文化学科卒業。82年にデビュー以来、歌手・俳優・DJ等幅広い分野で活躍。92年にはブラジルで行われた地球サミットに NGO団体、地球女性連絡会代表として参加。現在もイベント・トークショー多数参加。
井出 好明
(いで よしあき)
1950年 三重県生まれ。69年 松下冷機(株)に入社。自動販売機の設計、技術部及び商品企画担当参事、08年 3月に松下冷機(株)退職。4月よりパナソニック フードアプライアンス(株)にて商品企画を担当。他に自販機工業会の飲料部会、堅牢技術WGの主査。

 

1 清涼飲料自販機協議会の設立と「自主行動計画」発表までの背景

自主的・先行的に取り組んできた自販機の省エネ対策
早見
「エコカー減税」「エコポイント」など、省エネや環境に配慮した対策を訴求するコマーシャルが見られます。清涼飲料業界は、省エネ対策についてはかなり早くから取り組まれてきましたね。
上池
91年から主体的に取り組みを始めていますので、かなり先行的だと思います。
早見
京都議定書が97年ですから、それよりもかなり前からですね。取り組みの具体例を教えていただけますか。
上池
省エネ対策では、構造的にさまざまな研究を進めてきました。自販機は、商品を上から入れて下から出す構造になっています。下の1/3だけ冷やして、それ以外は常温にする「部分冷却」機能から始め、その後、一部だけを冷却あるいは加温するシステムに徐々に改良を重ねてきました。自販機工業会の功績です。
早見
商品が売れると、その分、中の商品が下りていき、下1/3まで下りると冷やすシステムですね。冷却器は24時間動いているのですか。
井出
ある一定の温度まで下がると一度止まり、ある一定の温度まで上がると動き出します。だいたい10分ぐらい動いて10分ぐらい止まるサイクルを、24時間繰り返しています。
冷却ストップの状態を長く保つことは非常に重要ですので、保温効率の高い真空断熱材を自販機に使用し、エネルギー効率を高めています。
また「学習省エネ」といって、自販機に内蔵されたコンピュータが、常に売れ行き状態を分析し、その結果に応じて「部分冷却・加温」という省エネ機能を適切に働かせる仕組みもあります。
さらに、自販機にはサンプルを展示している棚があり、常に明るくするために蛍光灯を点けています。これもセンサーによって、周囲が明るくなると照明を自動的に消し、暗くなったら点灯させる機能があります。蛍光灯自体も、インバータを採用することで減光し、消費電力を6割ほどカットしました。このような機能を自販機は備えています。
早見
それらすべてが、省エネ対策として次々に導入されてきたのですね。
ところで、夏が一番電力を消費する季節だと思うのですが、夏場の対策はありますか。
井出
夏場は、午前中に商品を冷やし込み、電力需要がピークを迎える午後1時から4時の間は冷却運転をストップする「エコ・ベンダー」が普及しています。北海道を除く全国の飲料自販機は、100%そうです。
早見
CO2排出量の抑制につながりますね。
世界的な潮流を鑑み、さらなる省エネへの自主的な取り組みをスタート
早見
さまざまな省エネ対策に取り組まれてきましたが、なぜ、新たに「清涼飲料自販機協議会」を設立されたのですか。
上池
91年以降、私たちは自主的・先行的に、CO2削減に取り組んできましたが、ここ10年ほどで、環境に対する世の中の考え方・意識が大きく変わりました。
97年の気候変動枠組み条約、いわゆる「京都議定書」を端緒に、地球温暖化対策を推進する法律としての「温対法」が98年に制定され、その後も省エネ法の改正や、昨年の洞爺湖サミットにおける福田スピーチ(「低炭素社会・日本」をめざして)など、地球温暖化防止への世界的な潮流を受け、業界の責任として、さらなる省エネへの取り組みが必要不可欠と判断したのです。
早見
協議会の構成を教えてください。
西脇
飲料メーカーで組織する全国清涼飲料工業会、自販機を製造しているメーカーで組織される自動販売機工業会、自販機にて製品を販売し、メンテナンスしているオペレーターの団体である日本自動販売協会、設置等を担当する団体の日本自動販売機保安整備協会の4団体です。
今まで各業界が別々に取り組んでいたことを全体のコンセンサスのもとひとつにして、より大きな成果を得るために設立しました。
早見
お互いに情報もシェアできますし、同じ方向に歩んでいくことでだいぶ変わりますね。
西脇
いくら各社が良いことを考えても、実務を担当する私たちが実行できなければ前に進みませんし、私たちが取り組みたくても、そういう機材がなければできませんので。
早見
皆さんの意識がかなり変わってきたということですね。
上池
そうですね。ただその中で、今すぐできることと、中期的に捉えていかなければならないことと2つありまして、協議会の中ではいろいろと議論を交わしながら、コンセンサスを得て進めていきたいと思います。
西脇
自販機については、実際に使われるお客様が省エネに対して意識が高いのです。
早見
なぜ自販機なのでしょう。
井出
自販機は街角に多く、目につくところに設置しています。機械が大きいですし、蛍光灯を点けて明るくしていますので、かなり電気を消費しているのではと。
西脇
むだ遣いが多いじゃないかと。
井出
機械メーカーとしては、断熱材、真空断熱材、部分冷却、学習省エネなど、さまざまな技術改良に取り組んできたのです。
今はヒートポンプといった切り口もあり、断熱性をさらに上げることも今後の課題だと思います。機械メーカーだけではなく、一緒に協議しながら進めていきたいと思います。

2 「自主行動計画」への取り組み

会員企業の取り組みと関係先団体への協力依頼活動
早見
では、その自主行動計画についてお話いただけますか。
上池
昨年12月1日、清涼飲料自販機協議会より、消費電力量の削減を目的とした「自主行動計画」を発表いたしました。地球温暖化防止への取り組みとして、2005年を基準とし、短・中・長期の自主的な削減目標と具体的な取り組みを策定し、今年の1月からスタートしました。
今年の1月から3月については、「清涼飲料自販機照明の消灯のお願い」と題したパンフレットや消灯ステッカーを配布し、会員企業が一斉に屋内自販機の照明の消灯活動に取り組みました。
井出
また、17の関係団体を訪問し、屋内設置自販機照明の24時間消灯への協力をお願いしました。
その中で特にパチンコホールの団体である全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)様は、私たちの考えに大いに賛同していただき、ただちに各都府県方面遊協理事長宛に、消灯活動への協力依頼通達を出していただきました。その後、全日遊連さんの省エネ活動3大目標の1つに、この消灯活動を取り上げていただきました。年末には、1万2000の加盟店への消灯状況調査を行われると聞いております。
その他にも、JR西日本デイリーサービスネット様では、8月から職場に設置されている照明の24時間消灯、駅構内の自販機の終電から始発までの間の消灯を実施されたとのことです。
団体ではありませんが、量販店のヨークベニマル様も第一ステップとして、郡山市内の店舗で屋内設置飲料自販機照明の24時間消灯を実施されました。自販機へステッカーを貼付し、お客様へのご理解をはかるという取り組みを行い、販売面への影響等の検証の結果、10月中旬には、全店舗へ拡大されます。
すべてが良い反応ばかりではありませんが、皆様地球温暖化防止への関心は高く、この消灯活動は着実に進んでいると感じています。
西脇
お客様にご理解をいただくところに課題があります。例えば、製造業のお客様については、工場自体も省エネに取り組んでいるなど、もともと関心をお持ちですので、販売している状況がわかるようにステッカーを貼った上であれば、ご理解が深く進捗が早いのです。
逆に、自販機自体でご商売をされているところは、照明を消すと売り上げを下げてしまうのではないかと、難色を示されるお客様も多いのです。
そこで、消灯するとこれだけの効果があるということをひとつのサイクルとしてご説明します。消灯すると消費電力が減って、電気料金が減ります。省エネになりますので、CO2削減にもつながりますと。
お客様によっては、具体的に削減できる電気料金もしくはCO2の量をご説明すると、「それだけ減るのだったら、いいよ」とご理解いただけます。バックボーンを説明することで、ご理解をいただいている状況ですね。
早見
大変なご苦労をされているのですね。自販機の消灯をすることで、どの程度変わるのですか。
井出
10%強ぐらいの削減です。
西脇
ただ、設置場所が暗くて、電気を消すと何も見えないところは例外です。
早見
ひとつひとつの小さな積み重ねが、大切なのですね。
ヒートポンプ機の導入を加速存
早見
昨年、ヒートポンプシステムを導入すると伺いましたが、進捗状況はいかがですか。
上池
冬場はヒーターで55℃近くまで温めて、電気をたくさん使っています。そこで、電気を使わずに温める方法がないかと検討し、大気の熱を利用して温める方式のヒートポンプの導入を進めています。大気の熱を吸収し、コンプレッサーで圧縮すると高温になり、自販機の庫内で熱を放出すると、コーヒー缶などの商品が飲みごろの温度になる。従来のヒートポンプのない機械に比べると、約30〜40%の省エネになります。
早見
ヒートポンプシステムを導入している自販機は、何割になりますか。
上池
今年設置した新台の50%ぐらいでしょうか。
井出
自販機全体で約550万台、そのうち飲料が約230万台弱あります。1〜2年前から、徐々にヒートポンプを市場に導入してきたのですが、本格的な導入という意味では、今年が元年ですね。
早見
空気中の熱を集めるには電気が必要です。その電気を使っても、3〜4割の省エネになるのですね。
上池
はい。従来のヒーターを1とすると、ヒートポンプは、2〜2.5倍の熱を効率よく出すので、電力を低減できます。
自販機の省エネに特化した「自販機月間」を開催
早見
そのほかの取り組みはありますか。
上池
毎年10月に「自販機強化月間」を実施しているのですが、今年は自販機の省エネに特化してセミナーを開催する予定です。外部の方もお招きして、輪を広げていきたいと考えています。
西脇
東京、大阪、名古屋で開催します。

3 2012年の削減目標37.1%達成へ向けて

[短期目標]自販機の省エネ機能の向上とヒートポンプ機の導入促進
早見
短期目標として、2005年比で2012年に37.1%削減としていますが、今後の見通しを伺います。
井出
自販機は、特定省エネ機器に指定されており、2012年に向けて、2005年比で37.1%削減できるよう、各自販機メーカーはさまざまに取り組んでいます。
今まで、断熱や部分冷却を含めてさまざまな開発に取り組んできましたが、さらに今後も削減をするために、もっと断熱性を上げて外の熱が入らないようにする、あるいは蛍光灯に代わりLEDを活用することなども考えています。
また、ヒートポンプ機の導入を促進することも、2012年の目標達成に向けて非常に効果があると思っています。まだまだ導入段階なので、今年は10万台程度ですが、環境意識の高まりから、今後はさらに導入が進んでいくと思っています。
上池
恐らく来年度は、一部の機種を除いて、新台の約9割がヒートポンプに代わっていく。
井出
新台が30万台近くあるうち9割というと27万台ですから2012年までの3年間で81万台。それに既存分を入れると約90万台近くになります。
上池
新しい機械に代わっていった場合、市場の普及率はもっと高くなって40%ぐらいになるかもしれませんので、相当大きな効果が得られると思います。
早見
ヒートポンプ機が導入されると、今までの自販機はどうなるのですか。
上池
順次ヒートポンプ機と入れ替わっていきます。
早見
その後はどうなるのですか。
上池
そこが今、大きな課題になっています。ヒートポンプに改造して、省エネに耐えられる機材をもう一度世の中に出す話と、廃棄するという2つの選択肢の中で、技術革新ができるかどうかですね。
早見
先日、東南アジアに行きましたが、自販機の中の飲料が冷えていないのです。冷えたものが出てくるのは「ぜいたくなんだな」と思いました。
西脇
冷やしもしない、温めもしないというのが一番いいのかもしれませんね。そういう意味では、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく飲みたいという消費者のニーズがあって、もう一方には省エネと、相反する部分があると思います。
早見
私たち消費者も、余りわがままを言ってはいけないのかもしれませんね。
[中期目標]庫内商品温度の設定変更も検討課題
早見
省エネ対策も重要ですが、やはり安心して楽しくおいしくいただきたいですね。
井出
2020年までの中期目標ですが、自販機の庫内商品温度の設定変更なども検討課題としています。
早見
そんなことまで検討されているのですか。
井出
ホットで55℃プラスマイナス2℃の加温設定をしています。コールドの場合は4℃プラスマイナス2℃に設定しています。庫内設定温度を1℃上げるまたは下げると、品質がどうなるかを検証しながら、省エネをもう1回促進しようという試みです。
早見
以前、ソーラーパネルで冷やしたり温めたりする自販機を見たことがあるのですが。
井出
自販機の上につけるパネルがあるのですが、電力の容量が余りにも少なく、蛍光灯を点けられるかどうかという程度ですね。
省エネの取り組みを消費者にご理解いただく活動が大切
早見
先ほどエコ・ベンダーの話がありましたが、普段の生活では、なかなか「これがエコ・ベンダーだ」と知る機会がありません。
西脇
消費者の方は自販機のことをあまりご存知ではないと思いますので、いかにご理解いただけるような活動ができるかが、一番大事だと思います。たぶん消費者の方は、自販機の中で商品を全部温めている、冷やしていると思われているでしょうから、下1/3だけを加温・冷却することで、省エネに取り組んでいることをしっかり伝えていかなくてはと思っています。
環境に対しても、京都議定書のかなり前から幅広く取り組んでいるということを、いかに広報できるかが大事だと思います。
早見
最近の自販機は、ただ飲み物を買うのとはまたちょっと違って、プラスアルファがいろいろ含まれていると感じます。
上池
飲み物以外に「あってよかったね」という部分、街の役に立つ自販機をどんどん設置して広げていくことで、ご理解を賜りたいと思っています。
西脇
省エネ活動等に取り組んでいることを、いかに業界として訴求していけるかが、今後のテーマですね。
早見
ぜひこれからも、社会に貢献する自販機として進化させてください。

『清涼飲料自販機照明の消灯のお願い』パンフレット

24時間消灯ステッカー

 

vol.19 目次へ戻る

ページトップへ
バナー
バナー
バナー