消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

清涼飲料の文化史

食文化史研究家・西武文理大学客員教授
永山久夫

郷愁をさそうラムネ[幕末の清涼飲料水]

いま日本人に飲用されている清涼飲料水の種類は、実に豊富である。家庭の冷蔵庫には常に何種類かが入っていて、さわやかな甘さと涼しいのど越しで人生を豊かにしている。

縄文時代には山ブドウの搾り汁があったし、奈良時代になると甘酒も登場する。しかし、何といってもインパクトの強かったのは幕末のレモネード。

嘉永六年(一八五三年)にアメリカの黒船艦隊を率いて神奈川県の浦賀にやってきたペリー提督がもたらしたもので、会談にのぞんだ幕府の役人にふるまわれた。

ところが栓を開けるときに「ポン!」と大きな音がしたので、役人たちは驚いて「新型の鉄砲だ!」と思わず腰の刀に手をかけたというエピソードも残っている。

ちなみに明治から現代まで清涼飲料水の代表として、日本人に愛され続けている「ラムネ」の名称も、幕末の「レモネード」がなまったもの。俳句の世界では、ラムネは夏の季語になっていて、ガラス瓶の中を転がるガラス玉の澄んだ音が、懐かしさと清涼感をもたらしている。

最近では、各地にラムネが作られ、地元の名物になっているが、これほど郷愁をさそう飲料水も少ないのではないだろうか。

イラスト:中川 学

 

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