消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

REPORT-11/中村まりの企業探訪
(株)ポッカコーポレーション 群馬工場

「おいしさの追求」と「品質へのこだわり」わくわくするような食生活を提案する

レモン飲料の製造販売メーカーとして創業し、日本で初めて「規格:※1コーヒー・190g 缶コーヒー」とホットor コールド自販機の開発で飲料市場を牽引した(株)ポッカコーポレーション。おいしさや感動を提供する商品づくりについてうかがいました。

群馬工場では缶ライン、大型PETライン、小型PETラインの3ラインが稼働しています。写真のアロマックスを生産するラインでは、1分間に1280 缶、1日に約5万ケースを製造することが可能です


高価な生レモンの代わりに開発されたレモン果汁

1963年、ポッカ初の工場である名古屋工場が竣工したときの写真。社名はまだニッカレモンでした

(株)ポッカコーポレーションさん(以下ポッカ)は、ポッカレモンに代表されるレモン飲料をはじめ、缶コーヒー、粉末スープなど時代を先取りした商品を展開してきた総合食品企業です。特に缶コーヒーの分野では数あるメーカーのなかでもパイオニア的存在で、他社にはない独自の技術を用い、味・香りにとことんこだわった商品を作ってきました。

広報・環境室長の井上佳昭さんに、創業当時のお話をうかがいました。

「創業者の谷田利景は名古屋でニッカバーの経営をしていました。当時はまだ生レモンの輸入が自由化されておらず、カクテルに使うレモンが非常に高価だったため、その代替品として合成レモンを開発したところ大ヒットしたのが会社の始まりです」(広報・環境室長 井上佳昭さん)

1972年、ポッカは日本初の「規格:コーヒー・190g缶コーヒー※1」を開発します。今も「顔缶」の愛称で親しまれているポッカコーヒーオリジナルです。

「創業者は非常に奇想天外な発想の持ち主でした。コーヒーを缶に詰めるという発想もそうですが、同時に、温かいコーヒーを販売できる自販機も思いついたのです」(井上さん)

開発オファーを受けてくれる機械メーカーはなかなか見つかりませんでしたが、三共電器(現サンデン)との共同開発で、73年にホットorコールド自販機※2、76年にはホット&コールド自販機※3の全国展開に成功。ポッカコーヒーというブランドは市場に浸透し、売上を大きく伸ばすこととなりました。しかしこの自販機の登場は、ポッカだけでなく、飲料市場そのものを現在の規模まで成長させるきっかけにもなっていました。

※1:コーヒー:コーヒー分含有量5% 以上
※2:ホットor コールド自販機=一台でホットかコールドどちらかの飲料だけを販売できる
※3:ホット&コールド自販機=一台でホットとコールド両方の飲料を販売できる

 

(右)発売当時のポッカレモン。もともとはバーで生まれたカクテル用の合成レモンでした

(左)ホットor コールド自販機。開発当時は、保温販売することによって起こる内容物の変質等のトラブルを克服するのにずいぶん時間がかかったそうですが、この自販機のおかげで飲料市場は爆発的な成長を遂げました

ポッカ最初のコーヒーである「顔缶」ポッカコーヒーオリジナル。創業者の谷田利景は名神高速道路を走っているときに、缶コーヒーのイメージがひらめいたのだそうです


お客様にいつも感動を 缶飲料の常識を破る商品開発

77年にはポッカコーポレーション・シンガポールを設立。「かなり早い時期から海外販路の拡大にも着手しています」と井上さん

ポッカの商品開発は創業者のDNAをずっと引き継いでいます。

「ポッカは経営理念に『お客様にいつも感動を提供する』という言葉を掲げています。これには、ほかにないものを初めて開発して、お客様をびっくりさせという心がこめられています」(井上さん)

ポッカは90年代に入ると、他社が考えつかない奇抜なアイデアによる面白い飲料を多数開発していきました。91年には振って飲むプリン「プリンシェイク」を発売。“デザート飲料”という、缶飲料の常識を破るカテゴリーを提案しています。

飲料ではありませんが、なんと、おでん缶も発売していたのだそうです。当時開発研究担当だった、味の科学研究所所長・加藤幸久さんはこう振り返ります。

「当時20人くらいしか研究員がいなかったのに、アイデアだけは100も200もあがってくるんです。とにかく片っ端から商品化しようという、非常に勢いのある時代でした。数え切れないほどの失敗もありましたが、そのなかで残った商品は今でもしっかりと会社を支えています」(加藤さん)

失敗は次の商品開発の糧になります。少しずつ成功率があがってくるのです。技術的に難しいこと、ほかにはない珍しいことに積極的にチャレンジさせてくれる、その失敗を許容してくれるという土壌がポッカにはありました。


おいしさへの追求 3つのオリジナル製法

ポッカは缶コーヒーに関してパイオニアとしての自負があり、80年代後半からコーヒーのおいしさを追求するために、さまざまな研究を重ねてきました。

「ポッカのコーヒーは常に進化を続けてきたんですよ」と語るのは商品開発研究所の木野卓哉さん。ブラジルでカップテイスターの修行をしたこともあるコーヒーのエキスパートです。

コーヒー本来の味の追求、その第一歩は焙煎の研究でした。豆の焙煎はコーヒーの味を決める重要な工程です。ポッカは87年、「セラミック遠赤外線焙煎」という独自の技術を開発します。

「脱酸素製法ではコーヒーに使用する水に含まれる酸素はもとより、充填前の空缶内部にもこだわり酸素を追い出しています」と木野さん

コーヒーの酸化劣化を防止する「脱酸素製法」は、各製造工程における酸素を窒素に置き換えることで除去します。この製法によりコーヒーの味は格段にアップしました。

コーヒーの命である香りにもこだわりました。挽きたて淹れたての味を再現するため、03年に開発されたのが「フレッシュナチュラルアロマ製法」です。挽きたてのコーヒー豆の香り成分を特殊な方法で回収し、抽出し終わったコーヒーに戻します。

こうした技術を総動員して作られた「ポッカの缶コーヒーの集大成」が05年に誕生したアロマックスです。アロマックスは味だけではなく、容器の形状にもさまざまな工夫があります。業界初の広口リシール缶を採用することで、缶から立ち上がる香りをたっぷり楽しめるようになっています。また、コーヒーカップから飲んでいるような気分を味わえるよう、缶の内面を白くなめらかな陶器のように仕上げています。


おいしさを科学する 味の科学研究所の設立

ポッカでは、味や香りを数値化し、おいしさを科学するというユニークな研究に取り組んでいます。一昨年、人間の味覚に依存している製品の「味」を科学するために「味の科学研究所」が設立されました。おいしさについてどのようなことがわかってきたのでしょう。所長の加藤幸久さんにお話をうかがいました。

「おいしさを決めるための要素は味だと思われるかもしれませんが、一番重要なのは食べながら感じる香りなんです」(加藤さん)

人間がものを食べるときに感じる香りにはふたつあり、ひとつは食品から直接立ち上る香り、もうひとつは食品を咀嚼したとき食品内部からでてくる香り“風味”です。風味のよさと、おいしさとの間には強い相関関係があることがわかってきたのだそうです。

研究所では味やにおいの識別装置を使い、味を数値化しようと試みていますが、測定された数値結果とおいしさの直接の相関係はわかっていません。しかし、測定された数値には再現性があるので、人間が官能評価で感じた結果を加味し、統計解析することでさまざまな研究に役立てています。

「おいしさを感じたとき人間は感動し、その感動は記憶されます。お客様に感動していただくというのがポッカの経営理念ですが、それは、感動していただくことによって、ポッカというブランドを“記憶して”いただきたいからなのです」(加藤さん)

充填機には92〜 93℃まで加熱したコーヒーが入っています。ここから100本のノズルが伸びていて、缶が1周する間にコーヒーが充填される仕組みになっています

「感動したとき一番印象深く残るのが香り。だから商品の香りの設計は非常に大切だと思っています」と加藤さん


工場として最大の使命はブレのない製品を作ること

アロマックスは通常のステイオンタブ缶と違い、底からコーヒーを充填し底ブタを巻き締めます。「充填後の製品一つひとつに音波を当て密封性が保たれているかどうか調べています」(松永工場長)

脱酸素製法で作ったコーヒーとそうでないものを飲み比べてみました。緑のシールが脱酸素製法のコーヒー。脱酸素しないと褐変反応が進行し、色も香りもまったく違います

ヨーロッパ生まれの紙製円柱容器カートカン

おいしい商品をつくるための製法や研究について、たくさんのこだわりがあることがわかりましたが、実際の製造段階における具体的な取り組みはどうなっているのでしょう。群馬工場のアロマックスの製造ラインを拝見しながら、ポッカの生産・品質体制についてお話をうかがいました。

「業界で初めてというポッカ独自の技術が多いため、新しい製法を導入する際には、味のブレが起きないよう慎重に品質管理を行います。最先端の技術で安定した品質の製品を作る、というのが工場として最大の使命ですね」(松永光生工場長)

コーヒー豆は自社焙煎工場で焙煎し、コーヒー生産ラインに輸送しますが、輸送中の容器内も窒素ガスで置換して酸化劣化を防いでいます。

ポッカのコーヒーの製法でもっとも重要な「脱酸素製法」を行う工程では、タンク内の酸素濃度を何度も測定・分析し、常に規格にあった状態で生産ができるようにしています。

「ラインで働いているオペレーターは機械の操作をするだけではなく、検査官であるという意識で働いているんです」(松永工場長)

こうして検査を積み重ねながら、安全・安心な製品を作れるような品質管理を心がけているんですね。


業界に先駆けて採用したカートカンで環境配慮

ポッカでは環境配慮に関しても積極的に取り組んでいます。

96年、商品開発同様、“業界に先駆けて”ある容器を採用しました。それがカートカンです。

「カートカンは紙素材で作られた缶状の容器です。環境問題が身近な話題になり始めた矢先に出逢い、真っ先に採用しましたが、きっかけは、飲料メーカーとして本業に近いところで環境配慮ができないか、という考えからでした」(前出 井上さん)

カートカンは国産の間伐材を30%以上使用しており、日本の森を育てるのに一役買っている容器です。林野庁もこの容器を推奨、普及につとめています。

「まだ詳しいデータはありませんが、販売量が増えてくれば、より具体的な形で効果がでてくると考えています。この容器を採用している会社は現在40社くらいありますが、みなさんと力を合わせながら普及につとめていきたいと思います」(井上さん)

牛乳パック同様、洗って広げたものを回収し、トイレットペーパーなどにリサイクルするような取り組みも続けているのだそうです。

ポッカでは、このほか物流においても、使い捨ての荷崩れ防止フィルムを、再利用できる荷絞めバンドに変更し、省エネ、CO2削減になるよう努力しています。こうしたひとつひとつの取り組みが、地球温暖化防止や環境負荷の低減につながっているのですね。


どんな不況に見舞われても売れる商品は必ずある

最後に、商品開発やその他の取り組みに関する今後の展望やビジョンをうかがいました。

「私どもの業界も不況を感じざるを得ないような時代になってきましたが、過去、日本経済が不況に見舞われたときでも、売れていた商品は必ずありました。少子化で消費が減ってしまうということも不安材料としてありますが、どんな時代でもお客様のニーズを実現するような商品を開発していくことが、われわれの使命だと思っています」(井上さん)

お客様を感動させることができる商品を開発すれば、そこには新しいニーズが増えて行く。常に需要を掘り起こしていけるようなメーカーであり続けたいと井上さんは言います。

「去年からすでに販売しているのですが、“暑さ対策”をテーマにしたミネラル補給飲料をご提案しています。発汗すると足りなくなるミネラルを吸収するものなのですが、スポーツドリンクとは少し違うミネラルが入っています」(井上さん)

常に世間を驚かせ、わくわくさせるような商品を開発してきたポッカ。創業以来の柔軟な発想で、これから何年たっても私たちに驚きと感動を提供してくれるに違いありません。

07年に導入された荷絞めバンド。今まではラップのような幅広いフィルムで商品を巻いていました。このバンドを使用することで、年間で使い捨て荷崩れフィルムの廃棄量を約2.4 トン、フィルムに含まれるCO2を約7.6トン削減することができます

回収されたカートカンはトイレットペーパーやティッシュペーパーにリサイクルされます。カートカン約35本がこのトイレットペーパー1ロールに生まれ変わります


(株)ポッカコーポレーション群馬工場
所在地:群馬県伊勢崎市堺東新井
操業:1991年

(株)ポッカコーポレーション
所在地:愛知県名古屋市中区栄
創業:1957年 従業員数:744名


探訪後記

私はコーヒーを飲むとき「こんなに香りが豊かでおいしくて、これ以上の味を出すのは難しいのでは?」と思ってしまうのですが、「お客様にいつも感動を提供する」という経営理念があるように、常に妥協を許さず初心を忘れず、コーヒー業界のパイオニアとして研究し続けているそうです。今回は工場見学やスライドを使ってのお話などもあり長い取材時間になったのですが、とても話がおもしろく勉強になり、あっという間の時間でした。

中村まり

中村まり 「めざましテレビ」など情報番組のリポーターや各種企業のCM キャラクターを務める。持ち前の好奇心と行動力を活かし、現在TV・ラジオなどのリポーター、キャスターとして活躍中。


(撮影/コサイワジュン)

 

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