清涼飲料水の安全・安心への取り組み
鼎談
(写真左から)
雛本 恵子/(社)全国清涼飲料工業会 技術部長
木本 希/(財)日本消費者協会 専務理事
早見 優/聞き手
食品の産地偽装など、食の安全・安心をめぐっては、さまざまな問題があります。
そこで今回は、清涼飲料水をおいしく、楽しく、お飲みいただくための「安全・安心」への取り組みについて、語り合っていただきました。
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雛本 恵子 (ひなもと けいこ) |
日本コカ・コーラ(株)原液品質管理と技術部品質管理を経て、91年/学術調査に移動、93年/学術情報マネジャー、03年/学術調査 部長、08年/退職、学術調査アドバイザー、09年/全清飲 技術部長 |
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早見 優 (はやみ ゆう) |
日本生まれ、3 歳から7 歳までグアム、7 歳から14 歳までハワイで育つ。 90 年上智大学比較文化学部日本文化学科卒業。82 年にデビュー以来、歌手・俳優・DJ 等幅広い分野で活躍。92 年にはブラジルで行われた地球サミットにNGO 団体、地球女性連絡会代表として参加。現在もイベント・トークショー多数参加。 |
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木本 希 (きもと のぞむ) |
1949年 山口県生まれ。72年 (株)旺文社入社。96年 (財)日本余暇文化振興会事業部長。01年 常務理事。社会教育・生涯学習活動等に関する調査研究等に携わる。03年4月より現職。日本感性教育学会副理事長、消費者機構日本(COJ)副理事長ほかを務めている。 |
1 清涼飲料水の「安全・安心」への取り組み
消費者協会に寄せられる食品に関する相談は全体の5%
- 早見
- スーパーに行くと、最近は「佐藤さんのホウレン草」など、写真入りで産地表示がありますね。
- 雛本
- 生産者の顔が見えるようになりましたね。
- 早見
- 消費者にとってはプラスですが、清涼飲料水の安全や安心の面ではいかがですか。
- 雛本
- やはり、口に入れるものは安全が第一です。安全を保ちながら、さらにおいしくと両方目指して取り組んでいます。
- 早見
- 木本さんのところに届く消費者の声には、どのようなものがありますか。
- 石渡
- 私どもには年間に約2000件程度の消費者相談が来ます。
私たちの財団では、47〜48年前から「消費生活コンサルタント」として、各地の消費生活センター等で相談を受け付ける方の養成事業をしています。そういった方々からの情報と、2000件の相談から判断すると、食品に関する相談は全体の5%ぐらいだと思われます。 - 早見
- そんなに少ないのですか。
- 木本
- ええ。安全・安心といわれましたが、「安全」と「安心」は別個に考えなければいけない。安全とは、危険度は何%以下と数値で計れるものです。安心とは心の問題で、伝播していく、不安要因を駆り立てる要素です。その根底にあるのが安全だと思います。
清涼飲料に関する相談は、ほとんど皆無と言っていい。たまにあるのは異物混入ですが、それはむしろ、消費者サイドに問題があるのではないかという気がするものが大半ですね。 - 早見
- なるほど。ただ苦言を呈するだけではいけないということですね。
消費者の知識不足・情報不足から生じる誤解も
- 雛本
- 異物混入というクレームは、結構あるのかなと思います。
ただ、お子さんなどは口飲みをして、唾液を入れてしまう。そうすると、「下に固まったものがある」という苦情につながってしまう。 - 木本
- 異物混入は、まさにそういったことまでも含んでのお話です。あとは、アルミが中に張ってある紙の容器がありますよね。「これは溶けているのではないか、心配だ」と。苦情というよりも調べてくれないかという話ですね。
- 雛本
- 質問自体が、知識の不足から起きるのではと思っています。
- 早見
- 次女が5歳のときに、1本しかないペットボトルからお水を飲んでいたのです。とても暑い日で、「みんなで回して飲もうね」と言っていたのですが、飲み口を口で覆ってしまい、飲んだ後に唾液が入っている。そうしたらみんな「要らないよ」「いいよ、もう飲んで」と言いだして。そこで初めて、ペットボトルの飲み方を長女と次女に教えました。
- 雛本
- お子さんがどういう飲み方をしているか、お母様が気をつけていないと、その後、ふたを閉めて持っている間に中身の変化に気がついて、となりますね。
- 早見
- 「あれ? 最初から入っていた」というように。
- 雛本
- 「最初から・・・」という苦情につながることも結構あると思います。製造工程で異物ははじかれるので、当然ない状況なのですが、消費者にとっては不安が先に立つ。そういう意味で日本の消費者は、飲料に限らず神経質なのかなと思います。
- 木本
- そういった感は強いですね。
消費者自身のための「消費者力」の向上
- 早見
- 今度立ち上がる消費者庁についてはいかがですか。
- 木本
- まず、日本消費者協会は財団法人です。日本生産性本部という団体がありますが、そこの「消費者啓発部門」が独立する形で日本消費者協会が誕生したのが48年前です。
消費者庁ができると、消費者保護が進んでいくと思います。裏を返せば、消費者は考えなくてもいいのではないかと錯覚してしまう。何かあったら守ってくれると。消費者相談をされる方が、自己責任の部分を忘れていることも少なくありません。
もちろん消費者保護は必要だし、そこに企業のモラルが求められる。しかし、消費者自身も賢くならなければと思います。「消費者力」と私どもは呼んでいますが、「消費者力」をつけなければいけないと6年前から「消費者力検定」をしています。 - 早見
- 検定があるのですか。
- 木本
- はい。ペットボトルを繊維にして何ができるか、ペットボトルの飲み方、保存の仕方で正しいのはどれかという問題も、出題したことがあります。
- 早見
- おもしろいですね。検定が好きな方もいますし、勉強すれば賢い消費者になれますね。
品質管理、コンプライアンスに関する取り組み
- 早見
- 品質管理やコンプライアンスは、統一されたものがあるのですか。
- 雛本
- 製造工程においては会員企業がさまざまな努力をしていますし、原材料も乳を使うのか、果汁という生の原材料を使うのか、そういったことによってかなり工程が異なります。基本的には「食品衛生法」に決められた基準を満たすようにしています。
- 早見
- 具体的に教えていただけますか。
- 雛本
- 一般的衛生管理が基本でして、原材料の生産過程から製品の製造、流通に至るまですべてに目を配ります。全清飲では、一般的衛生管理講習会を開いてレベルアップに努めています。
もうひとつ、HACCP講習会を実施しています。これはHACCPシステムと一般的衛生管理の2つを合わせた管理方法です。 - 早見
- 宇宙食のことですか。
- 雛本
- 宇宙食の方が、一般的な食事よりも厳しい安全管理を行っているので、そのコンセプト、考え方に沿ってつくられ、進歩させたものです。これは、製造段階でどういう問題が起きるか、その問題がどれだけリスクが高いかということを分析して、どの点を一番管理したらよいか、重点的に管理するところを決めて管理する方法です。
- 早見
- すべての飲料水を検査するものですか。
- 雛本
- 行政は、この考え方で管理をして製造すれば問題がないということですので、これをもとに製造しています。
- 早見
- 飲食に関するものは、すべてHACCPですか。
- 雛本
- HACCPシステムをとっている工場ばかりではないですが、この考え方で製造の工程を管理していると思います。飲料業界でも飲料水関係の6団体で講習会を開いており、今までに数千名が受講しています。
- 早見
- 何気なく飲んでいますけれど、いろいろなことを考えられてつくっているのですね。
『清涼飲料水工場の一般的衛生管理ガイドブック』
『HACCP:衛生管理計画の作成と実践』
2 「おいしく」「楽しく」ご愛飲いただくための啓発活動
賞味期限は未開栓の状態で保証する期間
- 早見
- ところで、「おいしく」そして「楽しく」いただくために、気をつけなければいけないことはありますか。
- 雛本
- 中身が何であるかということを「書いてない」とおっしゃる消費者の方がいらっしゃるのですが、パッケージやラベルにいろいろな情報を表示していますので、よくご覧になって、原材料や賞味期限、取り扱い方をご理解ください。
また「おいしく」ということでは、保存方法にも気をつけていただきたいですね。容器のまま火にかけたり冷凍庫に入れたりしない。日の当たるところに炭酸飲料などを置いておくと、かなりの高温になって中身が吹き出すこともあります。そういった注意事項がすべて書かれています。 - 早見
- 賞味期限と消費期限の違いとは。
- 雛本
- 牛乳やチーズなど冷蔵で保存するものは、5日程度を目安に消費期限となっています。
一方、ほとんどの清涼飲料は常温流通ですので、賞味期限が使われています。 - 木本
- 先ほどお話した検定試験では、ほぼ毎年賞味期限と消費期限の問題を出題しています。しかしなかなか認知されない。 それと開栓の問題。栓を開けた後の問題があります。
- 雛本
- 賞味期限も消費期限も開封するまで保証しています。開封してしまえば、例えそれが1週間前に製造されたもので、1年保証のものであっても、「なまもの」と同じです。
- 早見
- これは「091014」とあります。どういう意味でしょう。
- 雛本
- 2009年10月14日までおいしく飲めるという意味です。
- 早見
- この「EID」というのは何ですか。
- 雛本
- 製造所固有記号です。販売者がどこで、製造場所がどこの工場かがわかるようにしています。それを登録しているので、問題が起きるとその記号から、いつ、どこで製造されたかがわかる。トレーサビリティーができる状況になっています。
製造工程だけでなく、原材料のトレース記録も保存
- 早見
- 原材料もトレースできるのですか。
- 雛本
- できます。使われた原材料は、すべてトレースできるように書類を残しています。HACCPシステムでも記録を残すようになっています。
- 早見
- 茶葉はどこで生産されたかなど、そういうことも。
- 雛本
- 緑茶葉の原産地は多くないですが、果汁の原産地は多いですね。例えばある国でハリケーンが来ると、果物が傷んで購買できなくなる。そこで国を変えます。また、同じ味を保つために、いろいろな国のものをミックスします。しかし、その国の果物が1年中取れるわけではありません。
原料・原産地を表記するとなると、そのつどパッケージを変えなければならない。また多い順に書かなければならないので、印刷時にずれてしまうこともあります。パッケージに表示するのはかなり困難です。 - 早見
- 味を一定に保つためにどんなことをされていますか。主観的な味をテイスティングする人がいるのですか。
- 雛本
- いますけれども、糖度も酸度も数値で計れますし、原材料の情報はすべて記録していますので、そこからもわかります。
- 木本
- 全く同じ味を維持するというのは至難のわざだなと思っていたのですが。
- 雛本
- 各企業でその味を出して競争していますからね。
- 木本
- 企業努力ですね。
- 雛本
- 企業努力と企業秘密です。
消費者啓発―情報提供の取り組み
- 早見
- 「消費者力」をつけるためにも、正しく理解して、おいしく飲みたいと思います。そのための啓発活動はいかがですか。
- 雛本
- 全清飲のホームページには「清涼飲料の正しい飲み方と容器の取り扱いについて」というコーナーがあります。また『清・飲・彩』は、自治体や地方公共団体にも送付していますので、ご覧いただけるかと思います。最近では、自治体の主催する消費者向けイベントなどで、『みんな一緒に、おいしく、楽しく!』というパンフレットを配布しています。
- 木本
- 私どもの雑誌『月刊消費者』の中でも「食の安全」を扱うことで、啓発には努めております。ただ昔は、口の中に入れて「これ、おかしいぞ」という感覚がありました。
- 雛本
- そうですね。昔から舌で、これが食べられるか食べられないかと判断したものです。今は賞味期限、消費期限が書いてあるので、それに頼り過ぎているところがありますね。
- 早見
- 私が覚えているのは、小さいときに「牛乳、飲める?」と祖母に聞いたら、「においをかいで、酸っぱいにおいがしたら飲めない」と言われたことです。実際に嗅いでみると酸っぱいので。それで学習していく。
- 木本
- 感性が大切ですね。
- 早見
- それから、「ペット」「プラ」など、ゴミの分別の仕方が書いてあるのは嬉しいですね。
- 雛本
- リサイクル活動も大切です。
- 早見
- 飲んで終わりではない。ゴミまでのことを考えるのも消費者の責任だと感じます。
- 雛本
- リサイクルマークも正しくつける必要があります。原材料も、情報をきちんと企業が把握していないと正しい表示ができません。これらは消費者の方が商品を選択する上での安心につながると思っています。また法律の変化も速いので、正しい情報を会員企業の方が受け取れるように、そして正しく理解できるように、コンプライアンスとして表示の講習会も開いています。
- 木本
- 法律というのは世の中の出来事を受けて整備されます。そういう意味では、法や制度と消費者自身の向上が両輪でいかないと、消費者も国力もだめになる。
消費者啓発用トップページ
『みんな一緒に、おいしく、楽しく!もっと知ろう!清涼飲料水のこと』
3 今後の展望―清涼飲料水への期待
みんなの気持ちを楽しくするツールに
- 早見
- 日本には数えきれないほどの清涼飲料がありますが、今後、さらに新しい飲料が登場する可能性はありますか。
- 雛本
- 海外と比べると本当に種類が豊富だと思います。ゼリー飲料も出てきましたし、コーヒーなどは、缶でこれほど普及している国はないですね。やはり、日本は一番先を行っている感じがします。
年間1000以上の飲み物が発売され、それを日本人だけが得られる。海外の方はあまり新しい物についていかないようで、ひとつ選ぶとずーっと飲み続けるようです。 - 早見
- 文化の違いでしょうか。
- 雛本
- そう思います。新しい味に挑戦する日本人だからこそ、これからも新しい商品が開発されると思っております。
- 木本
- 私にとって清涼飲料は「すがすがしい」というイメージです。そして「涼やか」。そういう意味で、おいしいものを提供し続けてほしいと願っています。
さらに、HACCPなどきっちりなさっていることをもっと社会にアピールしていただきたい。これは社会貢献活動ですね。
それから、人の心がなかなか通じ合わない世界にあって、みんなの気持ちを楽しくするツールに清涼飲料がなればいいなあと思います。 - 雛本
- ありがとうございます。ホームページや冊子などで、広く皆様にご理解いただけるように努力していきたいと思います。
- 早見
- 今後が楽しみですね。ありがとうございました。


















