FOCUS/ソフトドリンク・レビュー
スポーツドリンクの変遷と市場予測
飲用シーンや容器、機能の拡大で成長
現状の問題点や競合市場の台頭を踏まえた、需要の分析と今後の市場動向を予測

1980年、日本初の機能性飲料として市場を創出したスポーツドリンク。スポーツ中の発汗によって失われる水分やミネラル分を効率よく補給するための飲料として誕生しましたが、飲用シーンの拡大、PET容器への移行、機能の拡大といったさまざまな方向に進化をとげ、今では140万キロリットルを超える巨大市場を形成しています。
今回はスポーツドリンクの歴史や今後の市場動向について、清飲記者会の戸田雅雄さんにご執筆いただきました。
市場の推移
スポーツ時の水分補給を目的とした、元祖機能性飲料ともいえるスポーツドリンク。わが国では、1980年に輸入ブランドと国産ブランドの缶入りリキッドタイプが相次いで発売され、市場が形成された。それ以前にも、粉末タイプで小さな市場が形成されていたが、その規模は極めて小さく、80年が事実上の市場創出と見てよいだろう。
スポーツドリンクは、その名の通りスポーツ生理学の見地から開発された機能性飲料であり、水に各種ミネラル分やビタミン類、クエン酸、カルシウムなどを配合し飲みやすく仕上げたもので、既存の止渇性飲料や嗜好性を追求した飲料とは生い立ちそのものが異なっている。当然、スポーツ時の飲用が想定されおり、浸透圧を考慮し急速な水分補給が可能であることが最大の特長だ。市場形成から、およそ30年が経過したスポーツドリンクだが、その成長には幾つかのポイントが見られる。具体的な説明は後述するが、そのポイントは①飲用シーンの拡大 ②PET容器への移行 ③機能の拡大の3つと、市場形成からおよそ15年が飲用シーンの拡大、その後の10年がPET容器への移行、そして残りの3年で機能の多様化が進んだ。
飲用シーンの拡大
スポーツ時に飲まれることを念頭において開発されたスポーツドリンクではあるが、比較的早い時期からスポーツ時以外でも飲用され、これが成長期の市場拡大の大きな原動力となった。具体的な数字を見ると、市場創生の1980年以降15年間で市場は55倍(80年が1万7000キロリットルに対し、94年が 93万5000キロリットル)に膨れ上がっている。二日酔いの脱水症状時や、真夏時の熱射病防止なども購買の動機に加わったことが急激な拡大の要因となっている。
また、大型PET容器が導入されたことで、家庭内での需要も着実に拡大し、発売時には想定されない飲まれ方がされるようになった。メーカーにおいても、スポーツ時の飲用はもちろんのこと、スポーツ時の飲用以外にフォーカスしたテレビCMや雑誌広告なども展開し、これらにより新しい需要が生まれた訳だ。
PET容器への移行
発売当初、ほぼ全量が缶容器で販売されていたスポーツドリンクも、他の清涼飲料同様、PET容器が飲料市場に登場してからは、急速にPET化が進んだ。PET容器との親和性は、ミネラルウォーターや茶系飲料同様非常に高く、現在では販売量の90%以上がPET容器で販売されており、PET容器の浸透がスポーツドリンクをさらに拡大したと言ってもよいだろう。
清涼飲料にPET容器が使用されるようになったのは1982年から。食品衛生法の改正により飲料容器としてのPETボトルが使用を許可されてからだが、スポーツドリンクの販売に大きく影響しはじめたのは、小型PETボトルの自主規制が廃止された96年以降だ。500ミリリットルPETボトル商品も間を置かず登場し、以降急速なPET化が進んだ。
96年のスポーツドリンクの容器別生産比率は、缶容器(アルミ・スチール合計)58・2%に対しPET容器39・0%と缶容器が優勢だったが、その2年後の98年には缶容器が43・9%に対しPET容器が55・0%と逆転、04年にはPET容器が全体の8割を超え、その大半がPET容器で消費されるようになった。ちなみに翌05年には、生産量が過去最高の165万キロリットルを記録している。
機能の拡大
ここ2〜3年のスポーツドリンクは、ミネラルウォーターの急速な拡大や炭酸飲料の復活などから停滞気味だ。生産量を見ても、06年以降は実績確保には至らず、市場は漸減している。とはいえ、140万キロリットル(08年予測)を超える巨大な市場を有していることから、製品面での新たな試みについては、各メーカーとも積極的に取り組んでいる。機能面においても、従来の「水分補給」から一歩踏み出したビタミン補給型やアミノ酸を加えたものなどが相次いで発売され、競合市場の侵食を最小限に食い止めている。この機能の拡大は、今年に入っても続いている。
08年の生産量と今後の市場動向
ここで、08年のスポーツドリンク市場を検証してみたい。今年から、「清涼飲料関係統計資料」(全清飲)でカテゴリーの括りが変更され、08年実績については「スポーツ・機能性飲料」となったことから、スポーツドリンクだけの正確な比較はできないが、製品特性が近い機能性ニアウォーターとの統合であることから、前年比(08年実績で7・9%減)はそのまま07年実績に掛けても大きな誤差は生じないものと思われる。この場合、08年のスポーツドリンクは、約 1 4 3 万キロリットルと予測され、07年実績から比較すると、およそ10万キロリットルの減少だ。市場にはゼロタイプのスポーツドリンクも投入されたが、コーラ飲料のような拡大とはならなかったようだ。
今年の市場はどうだろうか?スポーツドリンクは現在、主要3ブランドで市場のほとんどを分け合っており、それぞれが独自のプロモーションや製品の刷新を計画している。また、新規ブランドの参入も予定されているなど、例年になく手数の揃った年と見ることができる。市場の活性化は期待できそうな反面、昨年の清涼飲料市場で好調だった炭酸飲料、缶コーヒー、国産ミネラルウォーターなどが引き続き好調に推移していることから、実績確保の可能性はあるものの、大幅増は望めそうな情勢にない。
今後の動向を予測してみると、既存のスポーツドリンクとさらに、機能拡張したタイプの商品の追加という、ここ数年来の商品戦略が基本路線となろう。新規ブランドの参入や、トクホの追加などが積極的に行われた場合、活性化も促されるが、清涼飲料総市場が伸び悩んでいる現在で大きな拡大は望めないだろう。
(戸田雅雄)
2008年清涼飲料水生産量(国産)
(出典:全国清涼飲料工業会)

スポーツドリンク生産量推移(1980〜2008)
(出典:全国清涼飲料工業会)
















