消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

清涼飲料の文化史

食文化史研究家・西武文理大学客員教授
永山久夫

清少納言も愛した氷水[平安時代の清涼飲料水]

平安時代の甘味の主役は甘葛煎(あまづらせん)である。

甘葛ともいい上品な甘さがあって、とくに宮仕えの女性たちに好まれた。

甘葛煎の原料はブドウ科のツタで、山林などに自生する落葉のつる植物。冬に備えて樹液に糖分をたくわえる性質があり、つるの根元近くを切断して樹液を採取するが、これが甘い。

樹液を弱火で煮つめると、透明であわい黄金色のシロップになるという。この甘味料の用い方が清少納言の『枕草子』の「あてなるもの(上品で美しいもの)」の中に次のように出てくる。

「削り氷にあまづら入れて、新しき鋺(かなまり)に入れたる」。意味は「削り氷にあまづらをかけて、新しい金属製のおわんに入れたもの」。

削り氷は今でいったらかき氷。氷は夏でも使用できるように氷室(ひむろ)といって日かげの山の中腹に穴を掘り、そこへ大きな氷の塊を貯蔵した。氷は甘くてひんやりと冷たい清涼飲料水の原料として重要だった。

平安貴族は陶製・木製の他に金属製の器や、銀製の匙(かい=スプーン)なども用いていました。氷水も上品に匙で口に運んでいたようです。
イラスト:中川 学

 

vol.16 目次へ戻る

ページトップへ
バナー
バナー
バナー