消費者の皆さまへ

季刊広報誌「清飲彩」

[鼎談] おいしく楽しくお飲みいただくために
清涼飲料の安全・安心への取り組み

清涼飲料業界は3兆6000億円もの市場に成長し、社会構造やライフスタイルの変化に伴い、今後さらに多種多様化していくものと思われます。清涼飲料業界が社会とともに歩みながら健全な発展を続けるために、現状の課題と今後の取り組みについて、未来を見据えた視点で語り合っていただきました。

高梨正彦
(たかなしけいじ)
(社)全国清涼飲料工業会会長
1946年生まれ。69年成城大学経済学部卒業。同年、東京コカ・コーラボトリング(株)入社。経営企画室長などを歴任し、91年同社代表取締役社長に就任。現在に至る。06年5月から、(社)全国清涼飲料工業会の会長に就任。
聞き手
八塩圭子

(やしおけいこ)
キャスター・関西学院大学助教授
上智大学法学部卒業、テレビ東京に入社。報道局経済部で記者、同局アナウンス室でアナウンサーを勤める。2003年、フリーとなり、TVキャスターや雑誌の連載で活躍。04年、法政大学大学院社会科学研究科経営学専攻修士課程修了。経営学修士号(MBA)を取得。06年、関西学院大学商学部の助教授に就任。担当科目は、「マーケティング・コミュニケーション」。IR、PR、CSRといった「企業と社会の関わり」「企業の社会貢献」がテーマ。

清涼飲料業界の規模と推移

◎ここ数年は茶系飲料ブーム
八塩
清涼飲料のジャンルはずいぶんと増えて、市場も右肩上がりですね。
高梨
おかげさまで、生産販売金額は、1999年の約3兆4 000億円に対し、2005年は約3兆6000億円と推定され、この6年で約106%と順調に成長しています(図1)。牽引しているのは、お茶ですね。
八塩
時代によってブームがあるのでしょうか。
高梨
炭酸、ジュース、水により近いスポーツウォーター、紅茶類、そしてお茶となってきました。消費者ニーズの変化です。
八塩さんは関西学院大学で教えていらっしゃいますが、学生は教室に飲み物を持ってきますか?
八塩
PETボトルを持ってきます。どんなものを飲んでいるかなと、チェックしています。
高梨
男女差はありますか。
八塩
男性は大きいものを、女性は流行の細いスタイルです。
高梨
購入場所はわかりますか。
八塩
校内の自動販売機(以下、自販機)や生協、コンビニも学校のすぐそばにあるので。
高梨
ありがたいですね。飲む場所と、飲みやすいパッケージと、買いやすい価格、そして環境が許してくれる。こういうことが整ってきたのですね。
八塩
3兆6000億円というと本当に一大産業だと思います。パッケージ業者、PETボトル関連、自販機など、業界として随分広がっていますね。
高梨
大変な裾野です。

図1 清涼飲料の生産量と販売金額の推移

さまざまな課題への取り組みと成果[循環型社会に向けた環境への取り組み]

◎PETボトルの回収率は 世界最高水準の65・6%
◎今後は、リターナブル製品の普及・研究にも着手
八塩
一大産業になると課題も多いと思いますが、業界として今一番熱心に手がけていること、これから手がけていきたいことは何でしょうか。
高梨
私たちの会員数は約470社ですが、その窓口として(社)全国清涼飲料工業会があります。飲料業界のさまざまな課題に対して、積極的に対応していくため、プロアクティブに活動を見定めて、直近のテーマと中長期的に取り組むテーマとに分けて整理し、「ビジネスプラン」を策定しています。
その中で環境の問題、特に容器包装リサイクル法に関連することとPETボトル回収率の問題、それと自販機の地位向上、この2つが直近のテーマです。
八塩
PETボトルのリサイクル率は随分上がっていますね。
高梨
200 5年度の回収率が65・6%と世界最高水準です。アメリカの20%台、ヨーロッパの35%と比べ、約66%というのはものすごくいいと思います(図2)。
業界としては、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進に向けた自主行動計画を策定し、2014年度の回収率の目標を80%以上としました(図3)。
また昨年6月に改正された容器包装リサイクル法に対しては、容器の素材別リサイクル推進8団体と協働して「3R推進自主行動計画」を策定し、2010年度の達成目標としてPETボトルについては1本当たり3%の軽量化、回収率75%以上などに取り組みます(図4)。
併せて、地方の会員企業とリターナブル研究会を立ち上げ、ガラスびん製品の普及に向けた研究さまざまな課題への取り組みと成果[循環型社会に向けた環境への取り組み]にも着手しています。
八塩
環境的にも大きい問題ですから、ぜひ目標を達成してください。
高梨
地元でリターナブルできるびん製品も多く、環境に配慮でき、なおかつ観光客、消費者からも受け入れられています。
八塩
大手メーカーの製品も全国に流通していますが、環境対策を一緒に手がけているのですね。
高梨
ええ。そして、その情報はいつも中小・地方の方とも共有しながら、自由競争を促進していく形です。
八塩
これからも、基本的にはPETボトルが中心でしょうか。
高梨
利便性からやはりPETボトルになっていくと思います。
八塩
回収されたPETボトルのリサイクル先としては、フリース以外に何がありますか。
高梨
ネクタイ、学生の制服、ユニフォーム、カーペットなどの繊維、卵のパックや文房具などの成型品、PETボトル、パレットと、いろいろなものに再生されています。
八塩
国内で回収されたものは、確実に別のものにリサイクルされているのですね。
高梨
PETボトルに再生することも可能となっています。消費者の方にキャップやラベルをはずしてもらうことも必要ですので、それぞれ工夫をしています。

図2 日米欧のPETボトルリサイクル状況比較*

図3
PETボトルリサイクル推進協議会広報誌

図4
8団体の3Rの取り組み目標(抜粋)

[自販機を通じた社会貢献]

◎「地域の安全」面から自販機の活用を検討
◎情報端末機として新たな役割も
八塩
自販機をどのように活用していくかという点についてはいかがですか。
高梨
清涼飲料自販機の普及台数は、2005年で約221万台になりました(図5)。
八塩
221万台というと、消費電力も相当ですね。
高梨
私たちは京都議定書に先立ち、2005年までの15年間で1台当たりの消費電力を半減させました(図6)。これは自販機メーカーと共に取り組んできた大きな成果です。
これだけ普及すると、社会的な責任を自覚しなければいけない。私たちは自販機を活用した社会貢献を通じて、自販機の社会的地位の向上にも取り組んでいます。
昨年6月に日本自動販売機工業会と共に「自販機価値向上研究会」を立ち上げ、自販機を活用した社会貢献について研究しています。現在、社会的ニーズの高い「地域の安全」について、自販機を活用できないか具体的に検討しています。
もう1つは、単なる製品提供の箱でなく、情報端末機として位置づけ、社会に受け入れられる自販機にしていくことです。
八塩
自販機の中にICが入っているのですか?
高梨
入っているものもあります。小口決済の話がありますね。
情報端末機としてネット化することによって、さまざまな情報が得られ、道案内もできるようになる。現在は設置場所の住所を表示するステッカーを貼付し、事故などの通報や道に迷った時に活用していただき、また、地震などの災害があった時は飲料を無償提供できる機能の開発を進めています。災害時対応自販機という位置づけが高まれば、安心感が生まれますね。
八塩
自販機が情報発信や災害対策などの拠点になってくれると、とても役に立ちますね。
高梨
地域の安全面では、例えば子供の見守り--これは通学路で子供の足跡を確認して、「何時に通ったよ」と親と学校に通信ネットで連絡するシステムです。
八塩
教育現場では、学校の門と駅を通ったか、というチェックを実施していますね。自販機をネットワーク化することが、大事なテーマになってきますね。
高梨
情報端末機として捉えた時、1〜2週間に1回、必ず人がメンテナンスする端末機は他にあまりない。それが221万台ある。これは国民の資産です。
八塩
日本の文化ですね。社会における役割はすごく大きい。

図5 清涼飲料自販機の普及台数の推移

図6 缶飲料自販機の1台当たりの年間消費電力量の推移

[消費者啓発としての広報活動

◎おいしく安全に飲んでいただくために、ホームページを充実
八塩
自販機の価値を広く知っていただくためにも、広報活動は大切になりますね。
高梨
広報活動には2つの柱があります。1つはお客様への商品の取り扱いに関する啓発、もう1つは、幅広く飲料について知ってもらうための次世代教育です。
八塩
ホームページは情報量が多く工夫されていますね。
高梨
ホームページには、前者の取り組みとして「おいしく安全にお飲みいただくために」、後者として「ドリンクキッズ 飲み物の博物館」というコンテンツを昨年の7月にアップしました(図7、8)。前年同期と比べ、アクセス数が約1・5倍に伸びました。2つのコンテンツの影響だと思います。

図7 『おいしく安全にお飲みいただくために』

図8 『ドリンクキッズ 飲み物の博物館』

清涼飲料業界の未来に向けて

◎業界の社会的責任(ISR)を果たし、地位向上を目指す
八塩
幅広く社会貢献活動をされていますが、未来に向けたビジョンはありますか。
高梨
業界のミッションや中長期のテーマを、業界としての取り組み、つまり「ISR」(Industrial Social Responsibility)として、会員だけでなく他業界、小売業、行政、消費者に対して、どのように訴求していくかをまとめる必要があります。
八塩
業界としてISRに取り組んでいるところはまだないと思います。
高梨
もう1つ、この産業自体の地位をどのように向上させていくかですね。
八塩
業界の社会的責任を果たすことによって、この産業の地位もどんどん向上してくるものと確信しています。

 

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