SPECIAL 特別対談
発足した研究会の活動に向けて

高まる清涼飲料自販機の社会的価値向上への期待
この春、飲料メーカー、自販機メーカー各社が集まり、「清涼飲料自販機の社会的価値向上研究会」が発足した。屋外設置分だけでも全国約150万台を数える飲料自販機。その社会的活用を進めていこうというものである。これからの時代に求められる清涼飲料自販機の社会貢献とは何か。対談では「地域」がキーワードに浮かび上がった。
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岡本正耿(おかもと・まさあき) [清涼飲料自販機の社会的価値向上研究会 座長] 1947年東京都生まれ。マーケティングプロモーションセンター代表取締役。流通経済大学卒業後渡米し、ITAA、 GIHなどで精神分析、臨床心理学を学ぶ。70年同社を設立し、精神分析的知見を応用したマーケティングやコンサルティングを行う。多くの大学・専門校で講師を務めるほか、『消費社会の精神分析』(中央経済社)など多数の著書もある。 |
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鷲巣 力(わしず・つとむ) [ジャーナリスト] 1944年東京都生まれ。ジャーナリスト。69年東京大学法学部卒、同年平凡社に入社。「太陽」編集長、取締役などを歴任し、92年退社。その後、雄鶏社編集局長、スポーツニッポン新聞社特別委員などを務め、現在フリーに。著書に『自動販売機の文化史』(集英社)、『宅配便130年戦争』(新潮社)などがある。 |
清涼飲料自販機を、社会的に高次・広範囲な視点で眺め、新たな活用法の開発を目指す
- 鷲巣
- 今春立ち上げられた「清涼飲料自販機の社会的価値向上研究会」とは、主にどういった趣旨で活動なさっているのでしょうか。
- 岡本
- 一言で言えば、清涼飲料自販機の社会に対する新しい貢献事業モデルを構築していくことが、わたしどもに与えられたミッションです。
これまで、清涼飲料自販機は、「のどが渇いたときに、いつでもどこでもすぐ飲める」という特性を生かして、消費者に利益性を提供するという基本的な機能で社会に貢献してきました。
しかし、いつまでもその論理だけで清涼飲料自販機をとらえていては、清涼飲料自販機の社会的価値がマーケティング論だけで終始してしまい、かえってマーケットとしての広がりも閉ざしてしまうおそれがあります。
そこで清涼飲料自販機を、より社会的に高次元、広範囲の視点から眺めることにより、利益性の提供という機会を超えた社会貢献を新たに開発していこう、というわけです。 - 鷲巣
- なるほど。人間も機械もシステムも、社会的価値を認められてこそ、社会に承認される存在になる。清涼飲料自販機は——わたしなども毎日のようにお世話になって
いますが(笑)——まさに「文明の利器」として、その社会的価値を評価されてきたわけですが、その「利器」の側面を、飲用以外の用途にも伸ばそうと…。 - 岡本
- そうです。
- 鷲巣
- 研究会のメンバーは、どういった方々で構成されているのですか。
- 岡本
- 研究会メンバーは、各飲料メーカー、自販機メーカーの自販機担当社員で構成されています。ただし、「売らんがため」の議論はしません。むしろ、消費者の潜在的なニーズに耳を傾け、地域とのつながりを模索することが仕事だと考えています。
学識経験者など外部のメンバーを採用しなかったのは、実践不能な議論に終始しないためであり、むしろ、議論された事業モデルを本気で開発、実用化しようという意欲の表れととっていただけると幸いです。 - 鷲巣
- 個別の飲料メーカー、自販機メーカーでできる範囲を超える取り組みということになりますか。
- 岡本
- ええ。ご存じのように、清涼飲料業界や自販機業界は、すでに各社レベルではいろいろな社会貢献事業に取り組んでいるのです。
- 鷲巣
- 地震などの災害時に、無料で飲料を提供する取り組みなどは、その一例ですね。
- 岡本
- はい。一方、業界全体で取り組まないと難しい課題もありまして、研究会では5月の第1回会合以来、そのあたりのスクリーニングに時間を費やしてきました。そこで見えてきたテーマが、「防災」と「防犯」です。もっといえば、「防災」や「防犯」に関する自治体の公報機能までを自販機が代役できるようになれば、相当に清涼飲料自販機の社会的価値は向上するのでは、というのがこれまでの議論です。


社会貢献活動には、地域社会に根ざした鍵を握る人物の発掘と連携が不可欠
- 鷲巣
- 防災と防犯ですか。そういった側面でも機能させるためには、地域社会における清涼飲料自販機の位置づけ・役割を個別地域の実情にそくした形で明確にしていく必要があると考えますが、いかがでしょう。
- 岡本
- おっしゃるとおりですね。警察や消防を含む地元自治体との連携を緊密にする必要もありますし。中央からのトップダウンで事が運ぶような案件ではありませんから。地域社会に入り込んで、具体的には、どんなセクションのどんな方が、そういった貢献事業について、アドバイスを含め熱意を持って取り組んでくれるのか、そういう鍵を握る人物を発掘することが大切になってきます。まさに、個別地域の実情を知らなくては一歩も先に進まないわけです。
例えば、すでに総務省が防犯対策として実証実験を進めている事のひとつに、飲料自販機への無線基地局設置問題がありますが、あれも、自販機業界だけで閉じていてはダメで、地域社会との協力が不可欠。なにより地域の人々とのコミュニケーションを深めることが問われてきます。 - 鷲巣
- 情報が共有化されているかどうかだけでも大きな違いがありますね。例えば、被災時の飲料無償提供の件に関しても、たいがいの災害は、3日間さえ持ちこたえることができれば、支援物資が届く、といわれている。
- 岡本
- それさえ、一般的理解が行き届いているかどうか心もとない。
- 鷲巣
- そうなんです。そのことだけでも認識していれば、各自で3日分の備えをすることに積極的になるでしょうし、3日間を支えるという意味で、中身飲料の無償提供という貢献事業も有効になる。
- 岡本
- なるほど。理解があってこその社会的価値であり社会的承認ということですね。
ただ、防犯面では、けっこうやっかいな問題もありまして。子供たちへの卑劣な犯罪を撲滅するためにお役に立ちたい、という気持ちは強いのですが、飲料自販機もないような寂しい場所での児童犯罪が非常に増えているんですね。 - 鷲巣
- たしかに。でも、システムとしてできあがると、全体的には抑止力になるのではないですか。
- 岡本
- はい。そう信じて、いまのところ、通信インフラなどとの連携についても議論を重ねているところです。
- 鷲巣
- なにしろ、飲料に限らなければ全国で550万台もの自販機が設置されているわけですから、これを通信インフラとして活用しない手はありませんね。ただ、業界としてはえらいカネがかかりそうで、いささか気の毒ですが(笑)。
- 岡本
- そのコスト分担の問題についても、それぞれの地域や商店街の(防犯・防災対策を含む)ニーズをどれだけ把握しているかで変わってくるでしょうね。実情も知らずに押し付けるのでは、貢献とはいえなくなりますから。
- 鷲巣
- 先ほどおっしゃっていた、キーマンの〝発見〝は重要ですね。
- 岡本
- そうですね。キーマンと手を携えてモデル地区をつくることができれば、あとは、地域ごとにアレンジしながら、全国に広めることも可能になりそう。
- 鷲巣
- なんでもそうなんですね。私は、ある市民大学の運営委員を引き受けていたんですが、これもうまくいく秘訣は、一生懸命な人をそれぞれのコースでいかに見いだすかにあると思います。
- 岡本
- 形式的に進める人ではなくですね。
- 鷲巣
- ええ。現実的な運動レベルでは、やはり人物次第という面が強いですから。
たゆまぬ責任行使の改良や改善努力こそが社会貢献のベースを支える大原則
- 鷲巣
- 全国津々浦々に設置されている飲料自販機を、地域の防犯や防災といった社会貢献のために活用する。大変けっこうなことだと思います。
ただし、そういった社会的な機能をよく働かせるには、業界と利用者の双方が考えるべき問題があると思います。
私は、自販機を、「文明の利器」としてとらえる一方、設置や利用のしかた次第では、「文化の破壊者」になるおそれもある存在と考えています。
「社会的責任」という議論がクローズアップされる昨今、「利器」としての側面を伸ばして「破壊者」とならないようにしていくことは、業界と同時に利用者も考えないとならない問題だと私は思います。 - 岡本
- おっしゃるとおりで、責任を果たすことについて改良・改善を図ることも、社会貢献と並ぶ研究会の大切なミッションのひとつと位置づけています。
- 鷲巣
- 例えば、耐震性はどうなのか、省エネ対策はどこまで進んでいるのか、空き缶ポイ捨て対策にはどう取り組んでいるのかなど、消費者として見た場合、社会貢献と同時に尽力してもらいたい課題であります。もちろん、業界としてもいろいろと努力を重ねられてきたのは存じていますが。
- 岡本
- そうですね。例えば、かつて自販機は電気の無駄遣いの象徴のように見られたこともありましたが、実際には、この15年間で消費電力を2分の1に減らすまで省エネ努力を積み重ねています。最近では、耐震設計の基準をさらに高度化する研究会も発足しました。
- 鷲巣
- けれど、そういった実態がほとんど伝わってこない。
- 岡本
- そうなんですね。社会的責任の遂行というよりは社会貢献に数えられる「住居表示ステッカー」の貼付に関しても、一般には本当に知られていませんから。思うに、こういった事柄は、ニュースとしてはそれほど面白いものではないので、マスメディアを通じて流された場合、視聴者や読者の記憶に残らないのでしょう。
- 鷲巣
- とはいえ、自販機を文化として高めていくためには、消費者に向けて積極的に発信していかないといけませんね。それも課題のひとつ。
- 岡本
- ええ、そこは痛感しています。その際、やはり鍵を握るのが、地域に入り、実際に地域の人々と触れ合うことではないかと考えています。
メディアで伝えることが難しい問題も、地域に入って直接話すと伝わるんですね。例えば、虫歯にならない限り歯科医を訪れないという問題を解決しようと、歯科医師会がメディアに訴える代わりに市民らを交えた勉強会を長時間かけて小規模で展開したところ、認識が深まり事態が改善されたという報告例もあります。
清涼飲料自販機の新たな社会貢献を創造していくためにも、もっと地域へと踏み込んでいくことが求められていますね。 - 鷲巣
- 時間的にもコスト的にも大変でしょうが、そこをいとわず、一歩先の時代を目指していただきたい。そういう作業をしなければ、自販機が社会的に承認されにくい時代になってきたと強く思います。



















