INNOVATION
メタン発酵処理施設探訪————————コカ・コーラセントラルジャパンプロダクツ
(株) 東海工場
コーヒーかすや茶かすを再利用
廃棄物の削減と省エネを図る
清涼飲料業界では、ここ十数年、環境負荷の削減に取り組んできた。容器の軽量化・再生利用はもとより、コーヒーや茶の抽出かすを堆肥化するなど、生産で生じる副産物の再資源化まで図っている。もちろん、工場設備の省エネやコジェネレーション・システムの導入なども積極的に進めている。今回は、そうした環境対策のひとつとして、業界初の試みとなる「メタン発酵処理設備」をレポートする。
缶コーヒーやお茶飲料の抽出かすをメタン発酵させるというユニークな施設。
メタンガスから得られる電力量は約6kw/h。また、蒸気エネルギーも得られる。
飲料業界のCO2排出量は産業界全体の0.18%
円筒状の設備は、メタンガスを溜めるタンク。水噴式になっており、ガスの発生量によって、高さが上下に移動する。
日本で生産される清涼飲料は、年間約1600万キロリットル。当然のように、その生産にはエネルギーを必要とし、コーヒーの抽出かすなど製造に伴う副産物も出る。
例えば、二酸化炭素の排出量に換算した清涼飲料業界のエネルギー消費量は、年間91万3千トン。一方、産業界全体(経団連に加盟する35業種)では同5億239万トンを消費しており、清涼飲料業界は、その0・18%を占めるに過ぎない(ともに2003年の推計)。
生産量が増加している中で、清涼飲料業界では、エネルギー使用効率の向上に向けてエネルギー使用原単位を2010年に1990年と同水準にする目標を掲げている。生産施設への高効率機器やコジェネレーション設備の導入、またEMS(環境マネジメントシステム)を基盤とした現場の改善活動などによって、さらなる省エネを図る予定だ。
一方、生産によって生じる廃棄物の減量も必要とされるが、清涼飲料業界ではこの課題にもいち早く取り組んできた。
1990年時点で最終処分される廃棄物の量が業界全体で約2万トンだったのに対し、2003年ではこれを5600トンまでに削減している。これは、包装容器のリサイクルに加え、生産に伴う廃棄物を堆肥化するなどして再資源化を促進した成果。業界全体で見た2003年度の再資源化率は98・2%にも達している。コーヒー抽出かすを、メーカー社員の名刺の原料に加えている例などは、清涼飲料業界らしい取り組みといえる。
抽出かすをメタン発酵させ電力や熱として利用
抽出を終えたコーヒーかすは、パイプラインを通して処理施設へ自動的に送られる。まさに家庭で見るのと同じコーヒーかすだ
メタン発酵を終えた残渣。乾燥してサラサラの状態。この段階でも十分に堆肥の原料となる
工場から排出される汚水を沈澱ろ過した際に出る汚泥も、原料として処理される
環境への負荷を減らすために、業界全体、あるいは各メーカーとしてさまざまな取り組みもあるが、コカ・コーラセントラルジャパンプロダクツ(株)東海工場では、缶コーヒーやお茶飲料の抽出かすをメタン醗酵させるというユニークな設備を導入し、業界や他業種からも注目を集めている。
「第一の狙いは廃棄物の削減。この工場ではコーヒー飲料やお茶飲料の生産に伴い、年間約3千トン以上の抽出かすが出ます。それらは最終的に堆肥や土壌改良剤になっていましたが、メタン発酵処理施設を稼動させるまで、その再資源化を外部業者に委託していたわけです。」
コカ・コーラセントラルジャパンプロダクツ(株)の木下博敏氏は、以前までコーヒーかすなどを産業廃棄物として外部処理していたと話す。
「メタン発酵処理施設は昨年11月から試運転を開始したのですが、本稼動を3月まで待ちました。というのも、この設備自体が産業廃棄物処理施設になるわけですから、行政の認可を得る必要があったのです。」
さて、図に示すように、同工場のメタン発酵処理設備の仕組みは次のようなものだ。
まず、生産ラインから出たコーヒーや茶の抽出かすを原料混合槽へ送る(図の1、2、3)。一方、ここには、工場から排出される汚水に含まれる濃縮汚泥の一部と、回収された廃棄商品なども原料として混入される。それらを特殊な粉砕機で細かく破砕し、温水を加えた後、メタン発酵槽に送る(図の4、5、6)。
「メタン発酵槽には高温メタン菌が入っており、メタン発生効率が最も高い摂氏53〜55度の温度を保つようになっています。この熱源は、ここで発生するメタンによる発電と蒸気によって得られる仕組みで、外部からのエネルギーを一切使いません。」
木下氏が説明するように、ここで発生するメタンガスは、バイオガス発電機やバイオガスボイラーに送られ、この設備自体のエネルギー源となる(図の7、8、9)。外部からのエネルギーを必要としないところが驚きだ。

減容化率90% 6375tの廃棄物を削減
コカ・コーラセントラルジャパンプロダクツ(株)
製造企画部設備管理チーム
チームリーダー 木下博敏氏
さらに、発酵を終えた残渣(ざんさ)は、脱水・乾燥(図の10、11)を行い、最終的には堆肥や土壌改良剤の原料として売られる。もちろん、この乾燥機のエネルギーもバイオガスボイラーの蒸気を利用している。
「残渣は、以前まで処理費を支払って引き取ってもらっていました。委託業者が堆肥化する際に、自前で乾燥させる必要があるからです。でも現在は有価で買い取ってもらえます。つまり、メタン発酵を終えた残渣は、産業廃棄物ではありません。」
メタン発酵槽に投入される抽出かすや汚泥の量は、年間計約7126トン。これが発酵・乾燥を終えると約751トンに減量され、減容化率は約90%になる。廃棄物削減効果は絶大といえるだろう。また、発生した電気や蒸気エネルギーはこの処理施設で使われるだけでなく、余剰分があるときは工場へ送られ、生産や照明にも活用できる仕組みになっている。
「設計時の試算では、製品生産へ回せるエネルギーや、抽出かすのトラック運搬に使われていたエネルギーまで勘案すると、年間計336トンの二酸化炭素削減につながります。また、産業廃棄物処理の委託費の削減が年間約6400万円、メタンのエネルギー活用分で約870万円ですから、計7270万円が浮くことになります。」
このプロジェクトは、同社と独立行政法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共同研究事業として実施されている。初期投資4億2千万円のうち一部がNEDOの出資であり、ランニングコストも同社とNEDOの折半であるという。
「飲料メーカーが単体で取り組めるかといえば、初期投資としてちょっと厳しい面もある。また、メタンの発生効率で見ると、コーヒーかすが最適なものの、お茶系飲料の伸びなど需要に影響を受ける部分もある。」
木下氏はこう話すが、循環型社会の構築に向けて、非常に魅力的な新技術であることは間違いない。今後も、こうしたプロジェクトの増加が望まれる。















