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今後の気候変動の典型例となった2017年と2018年の夏

by 気象予報士

  • 進む地球温暖化

    人口増加やそれに伴う経済活動の発展などにより、少なくともここ最近100年間、日本の気候は温暖化が進んでいます。また今後も当面は日本だけでなく地球規模での温暖化が進行するとほとんどの気候学者が警鐘を鳴らしています。その地球温暖化の過程で様々な副作用的な現象が起こります。例えば海水温の上昇に伴う台風の巨大化や、海水あるいは地面と上空の気温差が一層大きくなることで発生する短時間強雨の多発などが挙げられ、すでにこれらの状況は近年の日本周辺の気候の傾向の中でみられています。
    その中で2017年の夏と2018年の夏は、性質が似た部分と正反対の部分がありましたが、いずれにしても進む地球温暖化の典型的な影響が現れ、非常に興味深いものとなりました。本コラムではまずこの2年間の夏の天候を比較します。そして今後の飲料業界での夏の営業施策に対する非常に良い教材となりうるポイントを整理します。

  • 2017年夏と2018年夏の気候

    繰り返しになりますが、2017年夏と2018年夏は、性質が似た部分と正反対の部分がありました。ともに7月は例年に比べて晴れて気温の高い日が多く、猛暑傾向となりました。一方2018年は、北日本と西日本でほぼ前年と同じような天候でしたが、東日本では中旬後半以外気温が平年より高めとなり、月間トータルでは平年より高めとなりました。東京では31日間のうち27日間で雨を観測し、天候不順だった2017年とは好対照の天候となりました。
    詳しくは下図をみてください。2017年、2018年それぞれの6~8月の気温推移を、北日本、東日本、西日本、沖縄・奄美の4つの地域別に見たグラフです。それぞれ上下真ん中に位置する横線が平年並みの目安です。実際の気温推移は曲線で表されており、その平年並みの線より上に位置し赤く塗られた部分が平年より気温が高かった期間とその振れ幅を、平年並みの線より下に位置し青く塗られた部分が平年より気温が低かった期間とその振れ幅を示します。大雑把にみるとこの2年間は、比較的似た気温推移だったということもできますが、細かいところまで見れば違いもありました。

    2017年地域平均気温平年差の5日移動平均時系列 2017年地域平均気温平年差の5日移動平均時系列2018年地域平均気温平年差の5日移動平均時系列
  • 天気予報は幅を持った情報

    天気予報は自然現象を対象としているため、適中率100%はありえません。そのため、気象庁では予報を発表するとき、ある一定確率で起こりうる範囲(予測値のブレ幅)を示すことがあります。これは気象庁が発表する予報を短時間で簡潔に伝えるテレビやラジオの天気予報コーナーでは必ずしも網羅できない情報です。予測値のブレ幅を知れば、予報がどれほど確からしいか、ブレる可能性がどの程度あるのか、ブレるとしたらどちらの方向の可能性が高いかなど、プラスアルファの情報を得ることができます。

  • 予測値のブレ幅から見る2017年7月~8月

    記憶に新しい2017年7~8月の天候推移を、当時実際にどのような予報を発表していたかとあわせて振り返ってみましょう。2017年の7月は全国的に猛暑となりました。一方で8月は、西日本で猛暑が続いたものの、中旬中心に東日本から北日本で著しい天候不順となりました。

    2017年夏の関東甲信地方における2週先の気温予測と実況の推移

    2017年夏の関東甲信地方における2週先の気温予測と実況の推移 2017年5月30日~9月8日の関東甲信地方での7日間平均気温の予測値(箱と縦棒;箱の範囲に入る確率は40%、箱を含めた縦棒の範囲に入る確率は90%)と観測値(赤線)を平年差で示す。横軸の日付は、その日を初日とする7日間の平均値を意味する。予測の提供日の6~8日後(木曜日提供の場合)または5~8日後(月曜日提供の場合)の値。

    2017年7月~8月当時の実績気温と予想されていた気温の推移をみてみます。上図のグラフの折れ線は実際の観測値、縦に四角とその上下に棒が伸びているのが気温の予想状況です。箱の部分は予報のブレ幅の中心位置で、40%の確率でおさまると予想された気温の範囲です。その上下の棒は、90%の確率でおさまると予想された気温の範囲です。このように予想される値の幅を、確率とともに表示するグラフを、通称「箱ひげ図」と呼びます。これによると、7月は気温が予報のブレ幅の中心である箱部分におさまらず、上部の“ひげ”部分にはみ出した期間が多くみられました。気象庁の予報(想定)の中でもかなりの高温だったことがわかります。それに対して8月上旬後半から中旬前半は、箱ひげの範囲をも下回る気温だったことがわかります。90%の確率で予想される気温範囲にもおさまらないほどの低温になりました。90%の確率と聞くと非常に高い精度のように感じますが、逆にいえば10回に1回ははずれることがあるという意味でもあります。

  • ポイント1 幅を持った情報としての使い方を考える

    箱ひげの幅を持った予報でも、確率的には10回に1回は当たらないことがあるという単純計算です。少しでもはずれる可能性がある情報として、使えない、と諦めていないでしょうか。ある程度の幅はあるものの、うまく使えば10回中9回の確率で有効に活用できる情報です。使う側として、どの範囲のリスクを取るべき情報かによって想定する範囲(ブレ幅)を分けて考えるのが得策です。多少のリスクを冒しても、予測の幅のほぼ中心の、比較的幅の狭い範囲で1点読みするか、リスクを減らして少し幅のある情報として柔軟に対応できる態勢を整えておくのか、状況によって情報の活用方法を使い分けるのです。

  • ポイント2 間隔とデータの違い

    2017年夏と2018年夏の天候差からも重要なポイントが1つあります。販売分析など客観的な評価を行う場合は、担当者自身の肌感覚だけでなく、しっかりデータで定量的に事実を押さえることです。
    例えば東京など東日本において2017年8月と2018年8月の天候差を考えた場合、全く異なったという印象が強い方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。確かに印象としては2017年8月は低温で2018年8月は猛暑だったと感じる人は多いと思います。しかしながらデータで見てみると2017年8月の東京の気温は平年差±0.0℃、すなわちちょうど平年並みの気温でした。それに対して2018年8月の東京の気温は平年差+1.7℃でした。2017年に比べて2018年はかなり気温が高かったという言い方は正しいのですが、2017年は冷夏だったとは必ずしも言えません。感覚だけではデータをミスリードしてしまう懸念があります。

  • お伝えしたかったこと

    今回の気象庁との共同プロジェクトでは、感覚的な議論を極力排除し、実際のデータに基づく定量的な結果を重視しています。そうすることで、会員各企業におかれましても実践的に活用できる成果が数多く得られたと確信しています。是非、本結果を実務に積極的に活用いただければ幸いです。

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